児童養護施設の入所、なぜ22歳までの延長が必要なのか

厚生労働省は、児童養護施設で暮らせる期間について、現状の「20歳未満」から「22歳未満」へと上限を変える方向で議論を進めている。なぜ期間の延長が必要なのか。国が設置した委員会の報告書から読み解く。

「自立支援の責任」を遂行できていない

この問題は、厚生労働省の「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」において議論されているもの。現時点で決定してはいないものの、2015年11月27日に開催された委員会では、以下の内容が記された報告書案が提出されている。「平成28年度より、不適切な教育を受けた子どもや家庭基盤が脆弱な子どもに対する児童福祉法による支援の対象年齢を『20歳未満』とする。あわせて、措置延長の年限を『22歳未満』とする」。

児童養護施設への入所は、児童福祉法で定められた支援内容となっている。現在、児童福祉法の支援対象年齢は「18歳未満」で年限が「20歳未満」。この年齢をいずれも2歳ずつ上げることで、養護施設の入所可能年齢の上限も上がるというわけだ。

報告書案の中では現在の上限年齢について、「支援の必要性の観点ではなく、一定の年齢に達したことで支援が終結しており、子どもの自立を支援するという公的責任の遂行という観点から問題である」と指摘している。

施設卒業後の離職率は70%

具体的に、どのようなことが指摘されているのか。例としてあげられているのが東京都の調査だ。都によれば、この10年間で児童養護施設を退所した子どものうち、調査時点で把握が可能であった退所者の約40%が、退所時に就いた職を1年以内に辞めている。さらに3年間では70%が離職していることが明らかとなっている。こうした離職者はより劣悪な職業・生活環境に置かれていることが推測されるのだ。

この結果について同委員会は、「職業的、社会的自立のための能力と生活基盤の形成が、現行の『18歳未満』までの支援では極めて困難であることを示唆している」とした。その上で「支援対象年齢を上げること」「自立支援計画の作成が着実に実行されるための制度づくり」が必要だと主張している。

あわせて「自立援助ホーム」についても言及している。「自立援助ホーム」とは、児童養護施設などを退所した後にも支援が必要だと認められた子どもたちが生活できる施設のこと。現在、同施設の支援の対象は「子どもが就労もしくは就学していることが求められる傾向にある」とのことだが、「就労や就学が困難な子どもにこそ支援が必要」と訴えている。

米国では28歳まで支援

同報告書案によれば、アメリカの一部の州では、社会的擁護の出身者に対する支援の上限について「精神的、社会的、職業的、経済的自立の年齢に関する調査研究の結果に基づき、28歳に定めている」とのことだ。委員会では、「早急に同様の調査を実施し、社会的擁護の利用者等に対する継続的な支援の枠組みを定める必要がある」と結論付けた。

委員の中からは、「施設ではなく日常生活において自律・自立性を要請するための十分なケア」や、「施設等への措置が解除された後も、地域において必要な支援が公的責任の下で提供される仕組み」が必要との声もあがった。

厚生労働省としては、上限年齢の引き上げについて「決定事項ではない」とコメントしている。子どもたちの支援のあり方について、議論の行方が注目される。