個人差はあれど、妊娠してからむくみやすくなった、嗜好(しこう)が変わった、眠気が強くなったなど、妊娠以前に比べてさまざまな変化を実感する人が多いだろう。その中のひとつとして、「白髪が増えた」を挙げる人もいる。実際、妊娠と白髪には何か関係があるのだろうか。「銀座HSクリニック」の院長・北嶋渉先生に聞いてみた。
加齢やストレスが原因かも
結論から言うと、北嶋先生の回答としては「直接的な関係はない」ということだった。確かに、身体のあらゆる機能に影響を与えるホルモンのうち、一般的に「女性ホルモン」と称されるエストロゲンとプロゲステロンは妊娠中に高まり、出産で一時的に分泌が減少・不安定な状態になる。特にこのエストロゲンは毛髪生成を促す働きがあるとされており、分泌が減ることによって白髪になるなどの髪トラブルを引き起こす原因になりうるという。
そもそも女性ホルモンの分泌量自体が極めて少量のため、妊娠・出産で急激に女性ホルモン量が変化すれば、妊娠前に見られなかった身体の変化も起こりうる。ただし、個人差はあれど、女性ホルモンのバランスは産後1~2年で妊娠前の状態に戻る。「妊娠を機に白髪が増えたという人は、妊娠以外の要因として加齢やストレスが挙げられるのではないでしょうか」と北嶋先生は言う。
加齢やストレスで白髪になる理由は、エストロゲンの減少によって毛髪の働きが鈍くなるからとされている。その構造は産後1~2年における女性ホルモンが不安定な状況と同じであるため、妊娠後の変化とそれ以外の要因を混ざって認識してしまういうのが実情のようだ。
ホルモンの分泌を促すことが大事
とは言え、女性ホルモンのバランスが不安定になる産後1~2年の間は、一時的にせよ白髪が増えやすい状況と言えるだろう。中には妊娠中に白髪の増加を自覚する人もいるようだが、例えば人によってつわりがある・ないがあるように、その人によって症状が異なる。
具体的に白髪対策としてできることは、バランスのとれた食事と睡眠をとることで心身ともに健康を保つことが一番。バランスのとれた健康状態を管理することで、ホルモンの分泌を促すことが大切になる。
※写真はイメージで本文とは関係ありません
記事監修: 北嶋渉
皮膚科医。銀座HSクリニック院長。頭髪に関するあらゆる悩み・トラブルを治療する頭髪治療専門院として、同院を2010年に開院。男性、女性いずれの診療も行っている。