英国のEU(欧州連合)離脱、いわゆる「BREXIT(ブリグジット)」の是非を問う国民投票が今年6月23日に実施されることが決まった。

キャメロン政権がEUとの交渉において、英国独自の移民規制など一定の譲歩を引き出すことに成功したからだ。もともと与党保守党は昨年5月の総選挙に際して、国民投票の実施を公約していた。キャメロン首相は、英国にとって有利な新たな条件のもとで、国民がEU残留を選択することを強く主張している。

それでも、英国の各種世論調査によれば、残留派と離脱派はかなり拮抗しているようだ。また、首相と同じ保守党内でも、国民の人気が高く、党首後継者とも目されるジョンソン・ロンドン市長や、閣内のゴーブ法相らは、EU離脱を支持する意向を表明している。英国のEU離脱懸念が拭えず、ポンドは対ドルでほぼ7年ぶりの水準まで売り込まれた。

長い目でみて、離脱はプラスなのかマイナスなのか

長い目でみて、英国、あるいは英国経済にとってEU離脱がプラスなのか、マイナスなのかは判断が難しいところだ。だからこそ、世論が割れているのだろう。

もっとも、国民投票で離脱派が過半数になるとしても、簡単に「はい、さようなら」となるわけではない。EU条約によれば、加盟国は一方的に離脱を通知することができる。ただし、実際の離脱(=EU条約の適用解除)は通知から2年後のことであり、その間に、離脱する国とEUは、離脱の手順や離脱後にどういう関係を構築するかについて交渉することになっている。また、EUは交渉期間を延長することもできる。

したがって、EU離脱に「イエス」となった場合、比較的長い期間にわたって、英国及び英国経済の先行きについて一気に不透明感が増すということだ。投資家は「不透明感」を最も嫌うので、交渉の期間中、対英投資は直接投資であれ、証券投資であれ、手控えられる可能性が高そうだ。もちろん、英国から出ていく企業や資本もあるだろう。

また、英国はEUや各加盟国と多岐にわたって交渉を続けることになるので、相当に政治資源を消費することになるだろう。

大手格付け会社の一社は、投票結果が「イエス」と判明した段階で、現在のソブリン格付けに「見通しネガティブ」を付与すると、すでに表明している。

国民投票までの約4カ月間、世論調査の結果などに対して金融市場が一喜一憂する場面が頻繁にみられるかもしれない。

なお、EU離脱が英国経済や為替市場に与える影響については、2015年4月3日付けの本コラム「迫るイギリス総選挙、イギリスがEU離脱したらどうなる!?」で考察したので、合わせてご参照されたい。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフ・アナリスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフ・アナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。

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