2011年3月11日、東日本大震災が発生し、東北や関東地方を中心に未曾有の被害が生じた。以降、国はもちろん各自治体、企業・団体、個人ボランティアなどが被災地復興のためにさまざまな支援を続けてきた。そんななか、地震発生から5年という節目を前に静かに幕を降ろす支援がある。神戸学院大学と工学院大学を中心とする「あなたの思い出まもり隊」プロジェクトだ。
津波で汚れた写真を修復
同プロジェクトは、津波で汚れてしまった写真を修復し被災者に戻す支援活動で、その報告会が2月中旬に工学院大学で開かれた。
報告会に先立ち登壇した工学院大学 佐藤光史学長は「多くの貴重な命が奪われ暗澹(あんたん)たる思いになった」と当時の心境を振り返りながら、「学生や多くのボランティアの方々が復興支援に向けて努力されたことが“救いのひとつ”になった」と、支援活動に関わったすべての人たちの労をねぎらった。
また、佐藤学長によると神戸学院大学と工学院大学は、復興支援活動に取り組みやすい素地があったとする。というのも、この両大学と東北福祉大学を加えた3大学は、「TKK3大学連携プロジェクト」と称し、震災前の2009年より防災・減災・ボランティアを中心にした社会貢献教育を展開していたからだ。加えて工学院大学は“日本初”の建築学部を設立した学校法人。建築学を学ぶにおいて防災・減災は不可分な領域であり、被災地でのボランティアは学生にとっても意義があるといえる。
写真修復という困難な作業については、神戸学院大学と工学院大学がおもに請け負った。東北福祉大学はまさに被災者そのもので、修復作業にあたる人的リソースを提供できる状態になかったため、プロジェクトの周知や写真の収集・送付という限定的な役割を担ったという。