大阪府教育委員会はこのほど、子どもたちによる暴力が多発している府内の小学校に、専門家を集めた支援チームを設置する方針を固めた。平成26年度の調査によれば、公立小学校での子どもたちによる暴力行為は1年間に1,905件。国公私立の小・中・高等学校での集計では、1万116件と全国ワースト1位になっている。
専門性をいかして暴力を半減へ
今回の取り組みは、スクールカウンセラーやソーシャルワーカー、それに校長OBらが作る支援チームを小学校ごとに設置し、子どもたちの暴力を減らそうというもの。これまでも府や市町から必要に応じて派遣を行っていたが、「チーム」として学校に設置するのは初めてだという。
なぜ学校ごとに設置するという形をとったのか。それは、暴力が多発している学校が全体のうちの一部であることが背景にある。府内の公立小学校で起こった1,905件(平成26年度)の暴力のうち1,002件は、全校の約5%にあたる50校で起きたものだ。課題のある学校での集中的な支援を行うため、同教委は、最終的にこれらの50校全てにチームを設置したいとしている。
さらに、それぞれの専門家が共に得意分野をいかして支援するという点も意味があるという。同教委の想定では、校長OBらが全体的な学校の状態を把握した上で、情報をチームに共有。ソーシャルワーカーには福祉の支援、スクールカウンセラーには心理面の支援を行ってもらい、子どもたちだけでなく、時には家庭にまで踏み込んでサポートする
教員の経験不足や力不足で子どもたちの心が不安定になり、暴力を起こすケースもあることから、校長OBらは現場教員の指導にもあたる。また学校によっては、教員を目指す大学生や地域の人たちもチームに巻き込んで、子どもたちに寄り添ってもらうことも見込んでいるという。教員とは違う身近な存在が、子どもたちの心の支えになるからだ。同教委はこれらの取り組みを通して、2年間で暴力行為の件数を半減させたいとしている。
暴力を減らすには家庭問題の解消が必要
なぜ大阪府では、子どもたちによる暴力行為の件数が多いのか。府の担当者は、背景に家庭的な課題を抱えている子どもたちが多いからではないかと推察する。「感情を言葉で表現できず、暴力に走ってしまうケースが目立つ。特に小学生の時点で暴力行為に及んでしまうということは、家庭環境に課題があると思う」と話した。
また担当者は、「大阪府は生活保護の受給率や虐待件数なども全国でワーストレベルになっていて、このことが関係していないとは言えないと思う」と続けた。調べてみると、総務省の統計(平成27年発表)では生活受給率の高さが全国1位。さらに児童虐待相談対応件数についても、7,874件(厚生労働省調査: 平成26年度速報値)と全国で最多になっている。
日本全体で見ても、小学校における子どもたちの暴力は増加。2014年度の国の調査結果によれば、その数1万1,468件と過去最多になっている。現場の教員だけでなく、専門家や地域も巻き込んだ支援が求められている。
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