総務省が公開しているデータによると、平成26年(2014年)4月の時点で、日本には1,718の市町村(基礎自治体)がある。近年はITに力を入れている自治体が増えており、福井県の鯖江市もそのひとつだ。今回、その鯖江市と、デル、インテルが組んで何かをやるというので、現地に行ってみた。
オープンデータ活用で日本の最先端を行く鯖江市
前置きが長くなるが、まず鯖江市の産業とITについて触れておく。鯖江市は伝統の地域産業として、眼鏡フレーム、漆器、繊維が有名だ。特に眼鏡フレームは国内でおよそ9割のシェアを持ち、海外産の格安プラスチックフレームなどを除けば、我々が手に取る眼鏡フレームはほぼ鯖江産と思っていい。また、市民が積極的に行政やまちづくりに参加しており、「鯖江市民主役条例」なども制定している。
行政とIT分野では、オープンデータ活用をもとにした「データシティ鯖江」構想が成果を上げてきているところだ。鯖江市が約150種類ものデータを公開し、そのデータを利用するアプリを民間が作る。具体的には、市内の公共トイレ情報、観光地や文化財の位置情報、子育て情報、バスの運行情報などで、120種類を超える民間製アプリがリリース済みだ。
データシティ鯖江は2010年12月からスタートしており、日本政府が2012年7月に出した「電子行政オープンデータ戦略」でも、鯖江市の例が紹介されている。自治体としていち早くオープンデータと民間連携に取り組んできた鯖江市は、オープンデータ活用の最先端を行っている都市なのだ。
鯖江市がIT分野に本腰を入れ始めたのは、2004年10月に現在の市長・牧野百男氏が就任してからのこと。伝統産業の眼鏡フレーム、漆器、繊維に次ぐ第4の中核産業として、IT活用を漠然と思い描いていた牧野市長は、IT分野で活躍する人たちと意見交換。そこで「ブログくらいは」といわれ、すぐにブログを始めた。さらに、SNSによる情報の発信力と拡散力にも威力を感じたという。
オープンデータ活用も、W3C日本マネージャーの一色正男氏とjig.jpの代表取締役社長・福野泰介氏からの提案を受けてのものだ(ちなみに鯖江市は、全国で初めてW3Cに加盟した市町村)。行政がオープンデータを提供し、それを生かした便利なアプリを民間がリリース……という流れができてくると、IT関連の施策も広がっていく。草の根的なものになるが、デジタルディバイドの解消を目指したシニア層向けのタブレット講座や、プログラミングの義務教育化に向けて市内の小中学校(一部)でプログラミングクラブを発足などが挙げられる。
鯖江市、デル、インテル
さて、鯖江市、デル、インテルが何を始めるかだが、単刀直入にいってしまえばWebテレビ会議システムの導入だ。鯖江市役所のIT会議室と、市内の施設(4カ所)をテレビ会議で結び、さまざまなIT施策におけるインフラのひとつに据える。今回は残念ながら導入前だったので、具体的な使い方は見られなかったが(職員の方も運用を始めてみないとわからない部分が多いと話していた)、記者会見の場でデモを体験できた。
導入される機材は、ノートPCの「Latitude E7000」シリーズ、デスクトップPCの「OptiPlex 7040/7020 Micro」、28型4K液晶ディスプレイなどだ。これらのハードウェアをベースに、インテルのWeb会議システムである「インテル Unite ソリューション」(以下、Unite)を動かす。
Uniteの機能を簡単にまとめると、ひとつの会議にどこからでも参加できるシステムだ。1台のモニタに複数ユーザーのPC画面を映したり、参加ユーザーのPCに同じ画面を配信したり、遠隔地の参加ユーザーとビデオチャットをしたりといった機能を持つ。PC画面をワイヤレスで転送する「インテル Pro WiDi」をはじめとして、できるだけワイヤレス環境で運用できるようにしているのも特徴だ。
記者会見では、記者席のひとつひとつにデルのWindowsタブレットが置かれ、プレゼンテーションの内容を目の前で見られた。これが、上記「参加ユーザーのPCに同じ画面を配信」する機能だ。