BuzzFeedが先週末に報じた「Twitterがタイムラインの時系列表示を止めてアルゴリズム表示を週明けにも導入する」というニュースを受けて議論が沸騰し、米TwitterのCEOであるJack Dorsey氏がそれに対する否定コメントを出した一連の騒動が話題になっている。こうした話題がたびたび持ち上がる背景には、Twitterの業績や成長性を巡って一部の投資家らが同社にプレッシャーをかけていることがあり、今後もまた懸念が再燃する可能性があるからだ。

もともとの話題はBuzzFeedのAlex Kantrowitz氏が2月6日(米国時間)に「Twitterが早ければ来週(2月8日の週)にもアルゴリズム主体のタイムライン表示を発表する計画」だと報じたもので、現在Twitterがユーザーのタイムライン表示に用いている逆時系列順(英語では"Reverse Chronological Order"と呼ばれる)の方式に代わり、Facebookなどで採用されている"ユーザーの志向に応じて最適だと判断された形で表示する"という「アルゴリズム方式」を採用するのだという。すでに一部ユーザーで実験が始まっていると噂されていたが、これをいよいよ他のユーザーにも適用していくというのがBuzzFeedでの報道の内容だ。

アルゴリズム方式ではタイムラインが時系列でなくなるだけでなく、不要と判断されたツイートはタイムライン上に表示されなくなるため、Twitterの特徴である「リアルタイム性」が薄くなるほか、一部ツイートがタイムラインの裏側に潜ってしまうことにより、本来リアルタイムで進行している事象をすべて把握できなくなる。アルゴリズム方式採用により既存のタイムラインが見られなくなるため、当然ながらTwitterをよく利用するユーザーほどその影響が大きい。

Twitter上ではBuzzFeedの報道後に「#RIPTwitter (さようならTwitter)」のハッシュタグで意見を述べたり、Dorsey氏に直接クレームを投げかけるなど、全米でTwitterが最も賑やかになるSuper Bowlシーズンのタイムラインを多くのツイートが駆け巡った。

この騒動はDorsey氏も把握し、実際に「#RIPTwitter」の動向も追いかけており、BuzzFeedの報道の少し後に「Hello Twitter! Regarding #RIPTwitter: I want you all to know we're always listening. We never planned to reorder timelines next week.」から始まる6つのツイートを連続投稿して見解を述べている。報じられているようなタイムライン改編は少なくとも週明けに行わないこと、そしてTwitterの特徴は「ライブ感」や「リアルタイム性」であり、自身もこのリアルタイムという特徴を非常に気に入っているという。今後もTwitterの改良は続けていくものの、こうした特徴を損なわないようにしていくし、ユーザーの意見にも耳を傾けていくつもりだ、という言葉で締められている。

一連の「#RIPTwitter」に対する投稿へのJack Dorsey氏の反応

ユーザーはこのコメントに安堵する一方で、同時にこの状態がいつまで続くかはわからないという疑心暗鬼に陥っているのも確かだ。その理由は2013年11月にTwitterが株式上場(IPO)して以降、成長性や業績面でたびたび疑問符を株主らに突きつけられており、さまざまな試みを取り込んで新規ユーザー獲得や収益化を目指しているものの、それが大きな成果となって返ってきていない点にある。前CEOのDick Costolo氏が退任に追い込まれ、創業者の1人であるDorsey氏が後任のCEOに就いてリストラ策を発表したのも、こうした流れのなかにある。

タイムラインへのアルゴリズム導入の話は「Facebookのような仕組みを導入してよりライトユーザーを取り込むように」という一部投資家らの要望のなかで、成長性に疑問符がつき始めた2014年ごろからたびたび囁かれるようになったもの。1ツイートあたりの文字数を1万字へ拡大という話と合わせ、つねに内部的な検討事項の1つに挙がっているとみられる。

上場時に40ドル前後だった株価は70ドルをピークに低迷を続けている。Costolo氏退任直前の2015年4月にはIPO時の株価を下回り、現在では15ドル台の水準まで落ち込んだ。ここ数週間、新興企業の株価は技術系を中心に総崩れの「セールオフ」状態となっているが、Twitterもその内の1社となっている

おそらく検討事項の1つに挙がっている可能性は高いが、これを実際に導入するのかについては、Dorsey氏をはじめ内部でも否定的な意見が多いようだ。Twitter投資家の1人として知られ、報道でもよく取り上げられるChris Sacca氏は、「自身はTwitterの従業員ではないし、同社の立場にコメントしたり、内部情報を持つものでもない」と前置きしつつ「だが、Twitterが時系列表示を止める可能性だけは0%だと断言する」と自身のツイートでコメントしている

Twitter投資家の1人であるChris Sacca氏のコメント

Mashableによれば、TwitterでiOS担当エンジニアのBrandon Carpenter氏は、「われわれもバカではない。われわれがTwitterを台無しにしようとしているという憶測を止めてほしい」とツイートしている。このようにTwitterサイドに近い人物からは「とりあえず冷静になれ」という意見が必ずといっていいほど出てくるが、Twitterが(投資家らに対して)厳しい局面にあるというのは多くのユーザーが認識しており、またTwitterの現状になんとか変化をもたらしたいと考える一部投資家が存在することで3者の思惑が絡み合っているのが、Twitterを巡る一連の混乱の元凶だろう。