2015年11月のNovember Update以降、Windows Insider Program参加者向けに4つのビルドをリリースしたMicrosoftだが、進捗が鈍化したように感じないだろうか。

Microsoft Engineering Systems Team担当CVPのGabriel Aul氏は、ビルド11082をリリースした時点で、「Windows共通のコアとなる"OneCore"の構造強化に務めた」と述べていた。だが、先頃リリースしたビルド14251でも、新機能の実装は見送ってバグフィックスやコア部分の改善に留まっている。

そもそもOne Coreとは、何を指すキーワードなのだろうか。カーネル(OSの中核をなす部分)のことかと思いがちだが、Windows NTから現在のWindows 10に至るまで、すべてのWindowsは同じ「NTカーネル」を採用し、その上でWindows 10やWindows Server 2012 R2といったWindowsプラットフォームを構築している。

厳密に言うと、現在に至るまで多くの改良を加えているので、1993年7月(日本では1993年1月)にリリースしたWindows NT 3.1のカーネルとWindows 10のカーネルは似て非なるものだ。

Microsoftは、Windows 8の時点でカーネルの統一、Windows 8.1の時点でアプリケーションモデルの統一が行われていると説明している

One Windowsを現すスライドは多数あれど、これが一番明確である。PCやモバイル、Xbox One、さらにはIoTもがWindows 10によって統合される

つまりOneCoreは、PCやタブレット、スマートフォン、Xbox Oneなどを包含する「One Windows」プラットフォームを実現するために必要な基盤となる。具体的には、Windows 10プラットフォームに共通する一連のAPIやDDIといったインタフェースを指す。OneCoreを使って開発したユニバーサルWindowsアプリやドライバーは、デバイスを問わずWindows 10プラットフォームで動作する仕組みだ。

デバイスのサポート状況がOSの価値を左右することを、Microsoftはよく知っている。だからこそOneCoreによって、Windowsプラットフォーム全体のユニバーサル化を推し進めたいと考えている。

ビルドナンバー再設定の理由

Windows 10 Insider Previewに関しては、ビルドナンバーの再設定も気になるところだ。Aul氏は「Windows 10とWindows 10 Mobileのコードベースを合わせるため」と説明しているが、これは狭義の意味でWindows 10とWindows 10 Mobileを別チームで開発していたことも影響しているのだろう。下図はFastリング向けにリリースしたWindows 10 Insider PreviewとWindows 10 Mobile Insider Previewのビルド履歴をまとめたものだ(ただし、10586.11および10586.29は割愛している)。

Windows 10およびWindows 10 MobileのInsider Preview版ビルド履歴をまとめてみた

図を目にすると、Windows 10は無償アップグレードを開始する2015年7月直前、Windows 10 Mobileも2015年11月直前にテストビルドの更新が活発化していることが瞭然だ。

振り返ればWindows 10は、最初にゴール(無償アップグレード開始)ありきで、突貫工事的に開発を進めてきたように感じる。MicrosoftはWindows 10をサービスであると定義し、完成度よりも更新頻度を重視していることは周知のとおりだ。しかし、肝心のユニバーサルWindowsアプリも問題が散見され、信頼性に欠く印象は拭いきれない。

だからこそMicrosoftの開発陣はOneCoreの構造強化に努めるのだろう。ユーザーとして気になるのは、いつ作業を終えて新機能を搭載するかだ。Microsoftの開発者向けカンファレンスである「Build 2016」は、3月30日から4月1日(現地時間)と昨年よりも1カ月早く開催する。このタイミングに合わせて構造強化を終え、Redstoneに向けた新たなWindows 10の姿を披露するはずだ。

阿久津良和(Cactus)