ドライマウスが悪化すると、食事をはじめとする日常生活に支障が出る

「なんとなく口の中がねばつく」「舌がひりひりする」といった状況に遭遇した経験はないだろうか。もしも「はい」という人がいれば、それはドライマウスの"サイン"なのかもしれない。

本稿では、M.I.H.O.矯正歯科クリニック院長の今村美穂医師の解説をもとに、ドライマウスの症状と原因について紹介する。

口が渇いて熟睡しづらくなる

ドライマウスの症状は、読んで字のごとく「唾液の分泌が低下し、口が乾燥する」というものだ。初期状態では「口腔内(こうくうない)のねばつき・強い乾燥」などの症状が出て、症状が悪化すると「唇のひび割れ」「舌のひりひり感」「舌や口腔内への炎症・白斑の出現」などにつながる。

だが、症状がさらに進行すると下記のような症状が現れ、QOLが著しく低下する。

■乾燥がひどく食事をうまく取れない

■話すことがおっくうになる

■口の渇きによる不快感で熟睡しづらくなる

■舌のひりひり感が口腔内の焼けつくような痛みに変わる

「薬を飲み始めて急に口が渇くようになった人は薬が原因の可能性があり、長期化して悪化することもあります。目や口が渇くといったシェーグレン症候群・膠原病の人は、日常生活に支障をきたすほど悲惨な状況になる場合もあります。原因となる問題が解決しないと症状が改善しないので、即座に直接的な改善を望めないことが患者さんを苦しめます」。

日本では潜在的に800万~3,000万人程度のドライマウスや、ドライマウスに関連した症状の患者、ドライマウス予備軍の方がいると推定されている。ドライマウスはまさに「国民病」と言ってもよさそうだ。

身近な原因は口呼吸

ドライマウスの原因の1つとして「口呼吸」が挙げられると歯科医師は語る

ドライマウスの原因は多岐にわたるが、健常な人が普通に生活するうえで最も身近なものとしてあげられるのは「口呼吸」ではないかと今村医師は指摘する。

「通常、呼吸は鼻で行います。鼻呼吸では空気は鼻から入り、鼻の中の湿った粘膜の空洞である副鼻腔(ふくびくう)を通ります。副鼻腔は多くの壁に仕切られ、乾燥しにくい状態になっています。口呼吸の方は口の中の粘膜が呼吸によって直接、乾燥してしまうため、ドライマウスになってしまうのです」。

口呼吸によるドライマウスを防ぐためには、鼻からの呼吸を意識することが大切。一部の歯科医院では、矯正治療と一緒に訓練やマウスピースなどを使った方法で鼻呼吸トレーニングをするケースもあるという。

他にも、「あごや舌といった口の周りの筋肉が衰えると、唾液の分泌がされにくくなります」ということで、日常生活でかみごたえのある食品を食べて唾液を出すようにするのも有効だ。