北海道新幹線新青森~新函館北斗間の開業まで2カ月をきった1月28日、JR北海道による報道関係者向け試乗会が実施された。H5系で新函館北斗~木古内間(35.5km)を往復する片道わずか13分の旅だったが、かえって新幹線の速さを実感させるものとなった。
H5系、車内に北海道にちなんだデザインも
試乗会はまず、新函館北斗駅に停車したH5系の外観・車内の撮影から始まった。外観には凹凸のある部分などに茶色の汚れが付着しており、すでに1年以上にわたって走行を重ねてきたことをうかがわせる。側面にあるシンボルマークは実際に見るとかなり大きく、横に立って記念写真を撮るのに良さそうだ。
普通車の客室に入ると、通路部分の床が雪の結晶柄になっていることに気づく。窓のブラインドには、ブランドバッグをほうふつとさせる柄が施されていた。縄文土器の文様やアイヌ文様にヒントを得てデザインしたものだという。
壁や天井の一部は木目柄とされ、暖色系の客室照明と天井のゆるやかなカーブが生み出すやわらかな陰影も相まって落ち着いた雰囲気。背の高さに応じて高さを変えられる可動式ヘッドレストも心地良く、すぐに眠りに入ってしまいそうだ。電源コンセントは各席の下部に備え付けてあり、パソコン作業やスマートフォンの充電などに利用できる。
この日の試乗会では普通車のみの公開とされたが、ゆったりとした革張りのシートが並ぶ「グランクラス」の室内も窓越しにうかがうことができた。
北海道新幹線の車窓から津軽海峡も見える!?
10時0分、報道関係者ら約200人を乗せたH5系が新函館北斗駅を出発。静かに、滑らかに走り出す。約2分後、時速210kmに到達したとの車内アナウンスが流れた。本来は最高時速260kmで走るが、深夜からの積雪を考慮し、速度を落として走行するという。
新函館北斗~木古内間には6カ所のトンネルがあり、距離にして同区間の半分近くを占める。その他に防音壁もあるため、車窓からの景色が開ける時間は思いのほか少ない。その反面、新幹線車両基地、雪に覆われた山林、広々とした田園風景、セメント工場と函館山を望む風景など、トンネルを出るたびに違った景色を楽しめる。天気が良ければ、津軽海峡もくっきりと見えそうだ。
走行中の新幹線は静かそのもの。左右に小さな揺れは感じるものの、従来の特急列車とは走行音も揺れも比較にならないほど小さい。意外にシートが硬いと感じたが、長時間座るにはこのくらいのほうが良いのかもしれない。車窓の景色の変化をカメラに収めていると、間もなく木古内駅に到着するとのアナウンスが流れた。13分の乗車時間はあっという間だ。今回の試乗区間と距離が近い五稜郭~木古内間(37.8km)は現在、特急列車で最短34分。この距離で20分も所要時間が縮まることに驚く。
この日は2~8号車の7両に200名が分乗したため、車内は空いていたが、開業日の3月26日にはこの客席が満席になることだろう。終戦直後に始まった青函トンネルの地質調査から70年の時を経て、いよいよ新幹線が津軽海峡を越える。