米Appleが仮想現実(VR)とそれに関連したインタフェース分野の専門家を雇い入れたことが話題になっている。現在のところ、AppleがVRを活用して何を目指しているのかは不明な部分が多いが、HoloLensを発表したMicrosoftをはじめとして、ライバルとされるFacebookやGoogleはVRや拡張現実(AR)の研究開発を進めており、Appleもまた自社のデバイスやサービスを絡めた何らかの取り組みを水面下で進めていると考えられる。
同件は、Wall Street Journalが報じている。今回Appleに参加したのはDoug Bowman氏で、同氏は米ヴァージニア工科大学(Virginia Tech)のヒューマン・コンピュータ・インテラクション・センター(Center for Human-Computer Interaction)でコンピュータサイエンスの教授を勤めている。Bowman氏の経歴や成果は3D Interaction Groupのページにまとめられているが、VRの世界でどのようにユーザーが活動し、フィードバックを得るのかといった手法についての数々の研究プロジェクトに携わっている。例えば、WSJでも触れられている「Llamas vs. Kiwis」のYouTube動画を見ると、その一端がわかるだろう。
もともとはFinancial Timesが報じていたもので、後にAppleがWSJに対してBowman氏雇用の事実を認めた。ただ、同氏がAppleに参加したこと以上の情報の提供については断っており、その背景などは不明だ。また、Bowman氏のヴァージニア工科大学名義のメールアドレスも「2016年8月まで休暇」との返信があるのみで、本人に接触できなかったようだ。ただ前述のように、ライバル各社は単にスマートフォンやタブレットの情報画面の中で情報表示が完結することなく、より生活に密着した形で情報にアクセスできたり、あるいは画面タッチやキーボード/マウスといった従来の限定的な操作インタフェースだけでなく、より自然な形でユーザーがコンピュータの世界にアクセスできる手段を模索している。
現在のところ、Apple自身はOculusのような没入型のヘッドギアデバイスや、MicrosoftのHoloLens、GoogleのGoogle Glassといった装着型のデバイスを出しておらず、どのような形でユーザーとデバイス、そしてサービスを結びつけるのか不明だが、そのあたりも含めて新しい可能性を模索していくのだと考えられる。
なおWSJによれば、Appleは昨年2015年5月にドイツでAR技術を開発するMetaioという企業を買収しているなど、過去に少なからずVRやARへの道筋を示す動きを見せている。今回は業界の著名研究者を引き入れた形だが、今後も買収やリクルーティング活動は続くとみられ、数年先の動向や新サービスに思いを馳せつつ、ウォッチしていると面白いかもしれない。