日本通信は22日、東京都内で事業戦略発表会を開催し、同社の福田尚久社長が2015年12月16日に発表された総務省の「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を受けて、同社のMVNO事業が今後目指す方向性について説明した。
タスクフォースの後押しで障害がなくなる
福田社長は冒頭で、これまではMVNO事業者に対して9つの技術的制約が足かせになっていたと説明。これらの制約がタスクフォースの声明により排除されることが、MVNOにとっての規制緩和第2弾になるだろうとした。
技術的成約には2015年11月10日に好評されたアンバンドル規定と、11月27日に好評された「開放を促進すべき機能」の2種類があり、それぞれが12月16日に発表されたタスクフォースの声明により規制緩和される方向になった |
続いて、規制緩和による市場の変化について、同社の歴史を背景に説明。同社は2001年にMVNO事業を開始しているが、MNOであるキャリアとの接続料などで問題があった。これを解消したのが2007年の総務大臣裁定であり、これがMVNO規制緩和の第1弾であったとした。
この総務大臣裁定によりMVNOの接続料金が低廉化し、いわゆる格安SIMの第1弾としてイオンからb-mobile SIMを発売した。これにより携帯事業者以外から携帯通信(SIM)を購入できることを広く浸透させた意義があったと説明。しかし、その後のMVNO市場を見るに、参入社は増えたものの、価格一辺倒の競争になってしまっている。MVNO SIMの認知度自体は上がったものの、携帯電話の契約数に占めるMVNOのシェアは未だ2%台と低迷しており、小さなパイをMVNO事業者が身を削りながら取り合っている状態になっている。
そこで日本通信は、価格競争である格安SIM事業から、今後はサービスを中心とした多様化競争へと舵を切ることにした。だが、多様化競争への道には「接続料算定問題」と「技術的制約」という2つの障害があり、これが排除されなければMVNOのさらなる発展はない、というのが、タスクフォースの諮問会における同社の主張だったわけだ。
今回、タスクフォースの声明により、こうした制約が排除される方針が定まり、日本通信としては従来のMVNOのモデル事業者としての役割を再定義し、新たに「モバイルソリューションイネーブラ」として、MVNOやシステムインテグレーター、メーカー、金融機関などがモバイルソリューションを実現するための黒子的存在として事業戦略を転換していくことを明らかにした。