マルタイ 販売商品(同社Webサイトより) |
九州を中心に多くのファンを抱える「棒ラーメン」。関東では目にすることはあまり多くはないが、九州出身者が帰省時にまとめて購入したり、アウトドアショップで登山の食事の定番商品として扱われたりと根強い人気がある。
その特徴は、そばやうどんの乾麺のような直線状の麺のかたちと、ノンフライ・ノンスチーム製法。とんこつ味やごましょうゆ味、辛子高菜風味などのラインナップを揃えている。先の登山愛好家向けの「山の棒ラーメン」は、スープにシジミ成分のオルニチンを入れ、ゴミが少なくなるようにパッケージを工夫した商品でもある。
この「棒ラーメン」を作っているのが福岡のマルタイ。「棒ラーメン」の商標を保有しているのも同社であり、社名を冠した「マルタイラーメン」は同社の定番商品となっている。
世界の即席麺市場は1000億食
日本で生まれたインスタントラーメン(即席麺)は、袋麺やカップ麺として、東アジアや米国などを中心に今や世界中で食べられている。世界ラーメン協会によると、2014年には1,027億食分もの即席麺が販売された。ちなみに初めて1,000億食を突破したのは2012年のこと。世界初の即席麺は日清食品が1958年に発売した「チキンラーメン」とされており、半世紀をかけて世界に広がったといえる。
販売数を国別でみると、トップは中国/香港の444億食、次いでインドネシアの134億食、3位は即席麺が生まれた日本で55億食。以下、インドの53億食、ベトナムの50億食、米国の43億食となっている。日本では定番商品となっている即席麺だが、海外においては近年で急速に伸びている地域もあり、ここ数年は南アジアが著しい。2014年に4位のインドは2010年 29億食 → 2014年 53億食と約1.8倍に、ネパールでも2010年 7億食 → 2014年 11億食などとなっている。
販売数でみると人口が多い国が上位に並びがちだが、1人あたりでみるとトップは年間70食強の韓国。次いで、ベトナムやインドネシアが50食強。日本は40食強でタイやマレーシアと同程度となっている。
東南アジアでのラーメン人気
このような中でここ数年のマルタイの経営は厳しい状況におかれていた。東日本大震災の影響で手軽に食べられる即席麺への需要が高まったことで売上が増加した時期もあったが、その反動減や価格競争の激化、2013年に稼働した同社 福岡工場の重い減価償却などで、2015年3月期までの経常利益は3期続けての赤字となっていた。ネットでは同社の業績を案じたファンらがまとめ買いをして応援する姿まで見られることとなった。
ところが2015年10月に発表した業績予想の修正で、そのような流れが一転する。売上高こそ当初予想から3.4%増の37億2,000万円であったが、営業利益は当初予想の8倍近い8,900万円。株価も上昇に転じ、2015年冒頭に390円前後であった株価は、同年末にはストップ高も含め551円まで上昇した。
その背景として、2015年1月に行った値上げで顧客がはなれることなく価格改定が定着したこと、徹底したコスト削減などが挙げられるが、もっとも大きいのは同社の棒ラーメンが海外での日本食ブームや円安による追い風によって、東南アジアへの輸出が堅調に伸びたことだ。同社はこの流れにあわせ、工場の生産を強化。直近の中間決算では棒ラーメンの販売実績(金額ベース)が前同期比で3割近く伸びるなどその効果が出ている。
ラーメンは"食のアウトバウンド"になるか?
昨年1年間に日本を訪れた訪日外国人観光客数は1,974万人と前年から47.1%の増加し、その影響は「爆買い」などとしてお馴染みの光景となっている。
一方で、日本生まれの即席麺などの海外需要も堅調で、どさん子ラーメンや博多一風堂、山頭火、うどんでは丸亀製麺などによる海外への店舗出店も相次いでいる。"食のアウトバウンド"としてのラーメン、今後のアジアやグローバルでの成功に期待がかかる。