「破産しても養育費の支払い義務は免除されない - 弁護士に払わせ方を聞いた」と題した前編では、養育費を確実に受け取るため、離婚する前にできることを弁護士法人ALG&Associatesの片山雅也弁護士と関範子弁護士に伺った。
後編となる今回は、養育費の取り決めをせずに離婚をしたあとでも、相手に養育費の支払いを要求できるのかについて、引き続き話を聞いた。
離婚しても親としての「扶養義務」はある
結論からお伝えすると、養育費について合意せずに離婚をしたとしても受給は可能とのこと。離婚が成立しても親子関係が解消されるわけではなく、相手にも親として扶養する「義務」があるからだという。養育費の取り決めについては、前編でお伝えした方法と同様だ。お互いに合意ができれば、その内容を記した「公正証書」を作成する。合意ができなければ調停の手続きに進み、それでもまとまらなければ、審判を行うことになる。
しかし離婚が成立したあとに、お互いが話し合って公正証書をつくるのは難しいというケースもあるだろう。さらには調停を申し立てたとしても、相手が裁判所に来てくれないのではないかという不安を抱えている人もいるかもしれない。これについて関弁護士は、「調停」や「審判」という手続きが有効だとアドバイスをくれた。
調停を申し立てると、相手方に裁判所から呼び出しがかかるが、この呼び出しには強制力がない。したがって相手が裁判所に来なければ、調停自体は「不成立」になってしまう。しかし離婚が成立している場合には、強制的に「審判」という手続きに移行する。「審判」では特殊な事情がない限り、たとえ相手方が裁判所に来なくとも裁判官が養育費の支払額を決めてくれるのだ。
その結果、相手には「審判」で下された決定に基づいた金額の支払い義務が生じることとなる。支払わなかった場合でも、裁判所の手続きを経て相手の資産や給料を差し押さえる「強制執行」を行うことが可能となる。
養育費の受給は「子どもの権利」
最後に片山弁護士は「養育費の受給は強固に守られている子どもの権利だ」と指摘した。その上で、「離婚をしたとしても、子どもは2人がつくったもの。そういう意識で泣き寝入りしないでほしい」と話してくれた。
また関弁護士は、「相手と連絡をとるのが怖い、話すことすら恐ろしい。本当は養育費がほしいが、どうしたらいいかわからないという人は多いと思う」とその心情を察したうえで、「弁護士が入れば、本人が相手と直接やり取りをして嫌な思いをすることはないので、気軽に相談してほしい」と呼びかけた。
子どもたちの生活を守るためにも、行動するひとり親が少しでも増えてくれたらと願う。
取材協力: 弁護士法人ALG&Associates
50名を超える弁護士を擁する弁護士法人。一般民事・刑事、企業法務、交通事故、医療過誤と幅広い分野を取り扱い、それぞれの部門に専属の弁護士が配置されている。今回協力いただいたのは、同法人代表執行役員の片山雅也弁護士と、家事事件を数多く取り扱う関範子弁護士。