国や都が運営している賃貸住宅……と聞いて思い浮かぶのは「都営」「都民」「UR(旧公団)」住宅ですが、これらの違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。さらに東京都の外郭団体である東京都住宅供給公社(以下、JKK東京)が提供する「公社住宅」もあるのです。JKK東京の担当者に各住宅の違いと、公社住宅のメリットについて話を伺いました。ちなみに、「抽選でなかなか入れない」「収入の関係で住めない」「古い住宅ばかり」、「ファミリー層向けで、単身世帯は住めない」というイメージの多くは公社住宅の場合「誤解」です。

「都営」「都民」「UR(旧公団)」「公社」住宅は何が違う? 礼金、仲介手数料、更新料無料の公社住宅の魅力

明日誰かに言いたくなる「都営」「都民」「UR」「公社」住宅の違い

まず抽選があるのは主に「都営住宅」とのこと。公共の住宅の中でも、公営住宅法に基づき所得の低い方を対象とした住宅を「公営住宅」といい 、東京都が管理する公営住宅が「都営住宅」となります(JKK東京が東京都から管理業務を受託しています) 。都営住宅は高齢者、ひとり親世帯、障がいのある方などは抽選において当選率が高くなるなど、優先措置が取られます。一方で、入居するには住宅に困っており所得が基準以下でなくてはいけないなど、制限もあります。

次に、「都民」「UR」「公社」住宅のうち、 「都民住宅」は主に「東京都の特優賃物件」のことです。特優賃とはバブル時代に家賃が高騰してしまい「このままでは中堅所得者層の住む家がなくなる」という時代ならではの問題から生まれた、国や都道府県などの地方自治体が家賃や建設費の一部を補助する物件のこと。

都民住宅の家賃補助額は世帯所得によって変わり(所得が高いほど補助額は下がる)、家賃補助期間は最長20年ですが、年々減少していきます(すでに家賃補助期間が終了した物件もあります)。都民住宅はバブルのころに生まれた制度なので「所得はどんどん上がっていくから、補助額を徐々に下げていっても大丈夫」という大前提がありました。しかしバブルのころから景気動向は大きく変わり、所得が安定して上がっていく、という人など今はなかなかいないはず。そのため現在は「都民住宅」の建設は行われていないそう。なお、「都民住宅」は原則として単身入居はできません。

「都営」「都民」「UR(旧公団)」「公社」住宅は何が違う? 礼金、仲介手数料、更新料無料の公社住宅の魅力

「UR」と「公社」住宅の違いは運営母体で、都市再生機構(旧公団)が運営するのが「UR住宅」、都道府県など地方自治体の外郭団体である住宅供給公社が運営するのが「公社住宅」です。ともにタワーマンションなどの高級物件から「昔の団地」で思い浮かぶような物件まで幅広く取扱があり、単身で入居可能な部屋もあります。なお、日本最大の住宅供給公社であるJKK東京は今年(2016年)も建替えによる新築住宅を建設中で、 古い物件どころか築浅や新築予定の物件もちらほら。

礼金・仲介手数料・更新料なし。新社会人でも、正社員でなくても、学生でも入居可

ここからは、JKK東京を例に「公社住宅」のメリットについて紹介します(各公社によって制度が異なることがありますのでご注意ください)。JKK東京の公社住宅最大の魅力は礼金・仲介手数料・更新料が不要なこと。また、最近の賃貸住宅では、保証会社(連帯保証を代行する会社)への加入が必須というところもありますが、公社住宅では保証人をつけられない場合のみ、保証会社への加入が必要になります。保証人を用意できる人ならば、費用をさらに抑えられるんです。

JKK東京の公社住宅は家賃に応じ四段階で月収の最低基準額がありますが、雇用形態による区別はしていないので派遣や契約社員、アルバイト、フリーランスといった正社員以外でも、基準額以上の収入を証明できる資料があれば入居は可能です。就職で上京する人で、まだ収入がない場合でも、就職先の会社が決まっており、今後の収入の見通しを証明できれば審査に進むことができます。一部では学生が入居できる物件もあります。

従来、公社住宅はファミリー層に向けた間取りの物件が中心でしたが、ライフスタイルの多様化にあわせ現在では1DKなど単身者にちょうどいい物件も展開しています。古い公社住宅を建て替えする際には、1棟にさまざまな間取りの物件を混在させ、多様なニーズに応えることを心掛けている、とのこと。新築などの一部を除きほぼすべての住宅の入居申込みは先着順でおこなっており、東京都渋谷区にある公社住宅募集センターのほか、インターネットを使えば24時間いつでも申込可能です。また、法人名義の契約(社宅としての貸し出し)も可能です。

JKK東京の公社住宅の内見をしたい場合は、JKK東京ホームページ、渋谷区にある公社住宅募集センター(9:30~18:00(日・祝休))、公社と提携している不動産会社で内見申込を行ってください。公社住宅は都内に70,000戸以上あり、入居可能な賃貸物件はすべてホームページに掲載されています(http://www.to-kousya.or.jp/chintai/index.html)。

ちなみに、公社住宅を探していると必ず出てくるのが「一般賃貸住宅」のという名称、JKK東京では「都民住宅」も取り扱っており、都民住宅ではない普通の賃貸住宅を「一般賃貸住宅」と呼んでいるのだそうです。

知っていると知らないでは費用に大きく差が出る公社住宅。期間によってはフリーレントなどのキャンペーンを実施していることもあるので、あわせてチェックしてみては?

 

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