大阪市此花区のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で15日に開幕した「ユニバーサル・クールジャパン 2016」(~6月26日)で、歌手・きゃりーぱみゅぱみゅをテーマにしたジェットコースター「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」が誕生した。
視覚と聴覚で別世界へ連れて行くVR(バーチャル・リアリティ)とアトラクションを融合させた世界初の"XRライド"として注目を集めている同アトラクション。特殊なVRゴーグルを装着し、360度どこを向いても摩訶不思議でかわいいきゃりーぱみゅぱみゅの世界を疾走する。この画期的な映像について、きゃりーのMVを手掛け、今回のアトラクションでも映像を担当した田向潤氏にインタビューした。
――田向さんは、これまでMVとCMを中心に活動されていますが、VRはいかがでしたか?
VRは今回初挑戦でした。最初に取り掛かったのは、絵コンテを書くこと。普段はMVだったら曲に合わせて、CMだったら企画ありきでコンテを書いていきますが、今回はジェットコースターのコースが先にあり、コースに合わせてコンテを書きました。のぼるところはのぼると決まっているので、何をのぼろうかとか、何でここで落ちるんだろうというように、逆の順番で考えました。
――普段は止まった状態で見るVRですが、今回は動きながらのVR。アトラクションだからこその難しさはありましたか?
やはり、コースが決まっているということです。逆に良かったのは、体感と視覚が常に一致していればVR酔いが起こりにくいというのがあって、実は座って見るよりコースターに乗って見る方が酔わないんですよ!
――アトラクションや映像のコンセプトはどのように決まっていったのでしょうか。
"きゃりーファクトリー"という工場を見学するという大きな企画はすでにUSJさんが決められていて、そこから広げていきました。「きゃりーの何の工場なんだ?」というところで、きゃりーが自分をかわいくするための自分のためだけの工場という設定に。そして、きゃりーを構成する要素として、メイクルーム、衣裳部屋、音楽スタジオという3つの部屋を作ろうと決め、さらに、スリルも求められたので、スリル体験も入れ込みました。
――きゃりーさんは工場のオーナーという設定ですが、映像の中のきゃりーさんは、単体で撮影して映像と組み合わせたんですか?
きゃりーはフルCGなんです! パフォーマンスキャプチャー、モーションキャプチャーの撮影をきゃりー本人で行い、そこから表情と動きを取り込んでキャラクターを作り上げました。
――フルCGだったとは! ちなみに、アトラクションを体験されたのはオープン直前ですか?
制作過程で何十回も乗りました。乗らないとわからないことがあるので、映像単体では進められないんです。映像をバージョンアップしたら、それで乗ってみて、違うなというところを直していく。その繰り返しです。
――このアトラクションのために書き下ろされた中田ヤスタカさんの音楽も、映像と世界観がぴったりでした。MVは音楽が先にあって、そこから映像を考えるという流れだと思いますが、今回はどの段階で音楽ができたのでしょうか。
今回は特殊で、まずジェットコースターのコースがあり、その次に絵コンテがあって、コンテに合わせて曲を作っていただきました。普段とまったく逆ですね。なので、ここで落ちて、こういうことが起こって…というそれぞれのタイミングで曲調が変わる、コースターの展開にぴったりの曲になっています。
――今回、この「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」で新しい挑戦をされましたが、今後、挑戦してみたいことはありますか?
僕は普段、完全に映像の人間なので、今回のアトラクションで本当に特殊なお仕事をさせていただき、アトラクションっておもしろいなと思いました。VRもそうですが、そもそもアトラクションって究極のエンターテインメントだなと。映像は視覚と音だけですが、アトラクションは体感や隣のお客さんとの共有もあるので全然違う。そのおもしろさを感じたので、機会があれば、そういった体験に関わることに挑戦してみたいです。
■プロフィール
田向潤
映像ディレクター/グラフィックデザイナー。1980年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、E. に入社しグラフィックデザイナーとして2年間在籍。その後Caviarに移籍し、映像ディレクターユニットtamdemとしてミュージックビデオやCMをディレクション。2011年8月よりフリーランス。きゃりーぱみゅぱみゅのミュージックビデオの演出を多数手がけている