4月に「N高等学校」の創立を予定しているカドカワと、予備校を主事業とする代々木ゼミナールが、大学受験に特化した「代ゼミNスクール」を2016年4月に開校すると発表した。そもそもカドカワが開校する予定のN高等学校(N高)とは、“デジタルネイティブ世代が夢見る、今のネット社会に対応した新しい高校”と同社が定義する学校法人。授業やレポート提出をネットで行うことにより、自分のペースで学習できるのがポイントだ。

高等教育の修了のほか課外授業を展開

2016年1月12日に代ゼミNスクールの発表会が東京・六本木「ニコファーレ」で行われた

N高がユニークなのは、ネットをとおした勉強で高校卒業の資格を得られるほか、数多くの課外授業が用意されていること。プログラミングや小説の執筆、ファッションデザインなどを通常科目と同時に学べ、地方自治体とも提携し、農業・漁業・伝統職人などの体験授業も受けられる。

また、不登校や引きこもり生徒の勉強の場として、新たな選択肢にもなりうる可能性が同校にはある。長いあいだ、不登校や引きこもりが教育現場で問題とされており、有効な解決策は見いだされていない。N高は、そうした生徒たちの“学びの場”として期待できる存在ともいえる。

ただ少し気になるのは、カドカワは、そうした不登校・引きこもり生徒が多く消費しているであろうコンテンツの巨大な生産源でもあること。もちろん、コンテンツブランド「KADOKAWA」が得意とするライトノベルやアニメ原作、同社が運営する「ニコニコ動画」が不登校・引きこもりの直接の起因とはいえないが、なんとなく“皮肉な展開だなぁ”と感じてしまった。

カドカワ 代表取締役社長 川上量生氏

いずれにせよ、ネットの活用に長けていると思われる不登校・引きこもり生徒にとって、N高の授業方法はハードルが低いと考えられる。彼ら彼女らが普段から親しんでいるコンテンツを生み出している企業が運営する高校ということも、ひょっとしたら学業復帰のきっかけになるかもしれない。加えてカドカワは、日本を代表する“版元”であり国内有数のコンテンツホルダーだ。課外授業でプログラミングや小説などを学ぶN高の生徒のなかから、才能ある人材に直接かつ早期にアプローチして、社会での活躍の場をすぐさま提供する意図があるのかもしれない。

それを示唆するかのように、カドカワ 代表取締役社長 川上量生氏は「ある意味ネットは現実社会の逃げ場になっているかもしれないが、優秀な人材が集まる場でもある。そういう方々が社会で活躍するきっかけにN高がなれば……」としばしば語る。