子どもの成長は親にとってなによりもうれしい反面、教育費の負担は長年にわたって家計に大きく響きます。若い世代に比べゆとりのある祖父母の援助を期待している人もいることでしょう。孫の学費負担をアテにできる祖父母がいるなら、「教育資金の一括贈与制度」を考えてみましょう。平成25年から始まったこの制度は当初は平成27年末までの予定でしたが、適用期間が平成31年3月31日までに延長されたため、まだまだ税制優遇を受けながら教育資金の援助をしてもらうことが可能です。

教育資金なら贈与税が非課税になるってホント?

「教育資金一括贈与制度」は子どもが親や祖父母から贈与を受けた場合、1500万円までなら非課税で贈与を受けられるという制度。通常の贈与の場合1年間の非課税枠は110万円まで。それ以上の贈与を受けると贈与税の対象となるので、この制度を活用すれば一度にたくさんの贈与を受けても税金がかからずに済みます。

子どもの教育費負担が苦しくて祖父母からの援助を受けたいと思っているなら、この制度を活用すれば贈与税なしで教育資金をもらうことが可能です。

ただし、条件がいくつかあるので注意する必要があります。

まず、お金の使い道は決められた教育資金に限られるということ。もらったお金で家族旅行に出かけたり、洋服などの購入資金に充てたりということは、たとえ子どものために使ったといっても認められません。

また、贈与をするにあたっては、きちんと申請を行わなければなりません。贈与資金は銀行や信託銀行などの専用口座で管理し、資金を引き出すには領収書などを提出しなければならない点も通常の贈与とは大きく違います。申請方法や講座の管理方法は取り扱いの銀行によって異なるので、事前に金融機関で相談してから贈与を実行することも大切です。

子どもの教育費負担が苦しくて祖父母からの援助を受けたいと思っているなら、「教育資金の一括贈与制度」を活用すれば贈与税なしで教育資金をもらうことが可能です

どんな風に使えばOKなの?

贈与資金の使い道として対象となるのは、まず学校や幼保育園など教育機関へ直接支払う費用。授業料や保育料のほか、入学金や施設費、給食費、修学旅行の代金なども対象になります。また、制服や体操着、指定の学用品などの購入費も対象です。平成27年4月以降は通学定期代や海外留学の際の渡航費などもOKになりました。

学校以外の塾や習い事などの費用も受講料や月謝などは対象です。スポーツ用品や楽器なども指導者から購入した場合には対象となりますが、一般的なスポーツ店や楽器店から購入すると対象外になってしまいます。また、クラブチームの合宿や遠征費用なども対象となります。

上手に贈与を受けるために必要なことは?

一括贈与されたお金は、子どもが30歳になるまでに使わなければ優遇の対象になりません。万が一教育資金として使いきれなかった場合、残りのお金は贈与税の対象となってしまうのでもらいすぎにも注意が必要です。

前述の通り認められる使い道がかなり限定されているので、しっかりと先の予定を立てた上で贈与を受ける額を決めることが大事です。一括贈与という名称がついていますが、1500万円の範囲内なら、分割して贈与を受けても大丈夫なので、これだけは絶対に必要という額を受け取って、状況に応じて追加で贈与してもらうということもできます。

そもそも相続税対策として早めに非課税で子や孫へ資産を移転させるために有効な制度ですが、相続税がかからない人たちにとってもある程度まとめて財産を分けてあげられる、非課税で教育費の援助ができるなどメリットがあります。ただ、相続税対策でない場合には、贈与するほうも受けるほうもいくらぐらいが妥当な金額なのかきちんと資金プランを立てた上で双方にとって無理のない額を考えることが大切です。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。