JTBワールドバケーションズ代表取締役社長の井上聡氏

海外パッケージツアー「ルックJTB」を展開するJTBワールドバケーションズは1月15日より、2016年度上期商品を順次発売している。このほど都内で行われた新商品発表会では、2016年度の注目旅行先や、旅行中のサービス拡充、新シリーズ商品などが明らかにされた。

2カ月ごとに代金が変わる商品を導入

中でも大きなトピックは、2016年から新たに導入される「旅行代金変動型商品」だ。海外旅行のパッケージツアーというと、「直前の予約で安くなる」という認識を持っている人も多いだろう。中には「予約済みの全く同じツアーなのに、後から販売されているものの方が安い」なんて悔しい思いをした人もいるかもしれない。

発表会に登壇した同社代表取締役社長の井上聡氏は、そんな状況に「挑戦する」と語った。「旅行代金変動型商品」では、原則として、同じ内容でも早期に申し込むほど価格を安く抑えられるよう、商品の価格が変動する。対象商品は、3カ月ごとに同社が発表している基幹商品(いわゆる"黄色パンフレット")と、添乗員の同行しない個人型商品の一部。最大9カ月先までの代金が発表され、価格の変動周期は2カ月となる。

なぜこの商品が導入されたのか。発表会に登壇した同社取締役 東日本販売本部長の青木哲郎氏は、「航空レートやマーケットのダイナミックな変動に対応するため」と説明した。催行日が近づくほど値が上がる傾向にある航空・ホテルの仕入れ価格や、枠が少なくなっていく空席状況をパッケージ価格にダイレクトに反映させた商品、というわけだ。

JTBワールドバケーションズ取締役 東日本販売本部長の青木哲郎氏

「旅行代金変動型商品」は"黄色パンフレット"を中心に導入される

同商品は2カ月ごとの代金変動を前提としているため、早いタイミングでの商品発表が可能となる。また、これまでは需給関係の変化に追加商品の設定で対応していたが、今後は基幹商品の価格変動で対応できるようになるため、料金体系がわかりやすくなるメリットもある。

なお、「旅行代金変動型商品」のパンフレットには、表紙にピンク色の矢印で対象シーズンが示される。添乗員同行の商品では導入されないので注意が必要だ。

フレキシブルな代金変動で需給関係の変化に対応

早期の申し込みでメリットが大きくなる

目印はピンク色の矢印

上質ホテルの新シリーズにFITへの取り組みも

今回の発表会では、ほかにも多数の新商品や取り組みが発表された。

2016年度の注目旅行先として、同社は「ハワイアン アイランズ」を設定。ハワイといえばホノルルを有するオアフ島が有名だが、カウアイ島やラナイ島、ハワイ島などの他の島々に着目。各島は観光資源も豊富で、よりリゾートらしい、ゆったりとした時間を過ごせるのが魅力だという。

ほかにも、現地でのサービスや添乗員のサポートなど、各旅行先におけるツアーの"ソフト"面も充実させる。たとえば、グアムでは「KOMI-KOMI30」というオプションが導入される。「サンセットビーチバーベキュー」や「島内観光」「イルカウォッチング」など、現地で楽しめるアクティビティーや観光、食事など計30種類のアイテムから体験したいものを追加料金なしで自由にアレンジできるというものだ。

新シリーズ「一度は泊まってみたい世界のホテル」の取り扱いも開始

また、新シリーズ商品として「一度は泊まってみたい世界のホテル」の取り扱いも開始。現地での観光ではなく滞在するホテルに焦点を合わせた商品で、「一度は泊まってみたい」と思うような上質なホテルを厳選し紹介する。中には19世紀の貴族の館を改装した「ラ・レゼルヴ」(フランス・パリ)など、客室数が少なくこれまではパッケージ化が難しかったホテルも含まれる。

さらに、航空券とホテルの手配のみを基本パッケージとした「エアホ」の販売も強化。設定都市の増加などを行い販売の拡大を目指す。サービスやサポートを必要な分だけ柔軟にアレンジできるのが同ツアーの強みで、増加傾向にあるFIT(個人での海外旅行)需要に対応する。

ほかにも、ヨーロッパを中心にチャーター便を利用したコースを前年度の4倍に拡充するほか、2015年に新登場した「世界の絶景」シリーズも、一部を除いてラインアップを総入れ替えし販売する。

一連の施策を指し、井上氏は「ホールセール(他の旅行会社でも販売可能な企画商品)の革新に挑戦する」と決意を語った。数々の"挑戦"が海外旅行市場に波を起こすか、今後に注目したい。