ユニークな商品名と見た目のかわいさゆえ、話題沸騰の伊勢発銘菓がある。その名を「ササササササササササ中」。さて、なんと読むかお分かりだろうか?

パッケージデザインもキュートな「ササササササササササ中」の「サトナカ各一」(3枚入り/税込300円)

正解は「サトナカ」。「サ」が10個+「中」で「サ・10(ト)・ナカ」というわけだ。考案したのは、三重県伊勢市出身の橋本ゆきさんと中谷武司さんによるユニット「エメロン」で、2人は伊勢崎市内で、サトナカをはじめとする食品やグッズを扱うショップ「モナリザ」を運営している。

それにしてもなぜこのような個性的な名を持つ商品が誕生したのかというと、エメロンが立地する伊勢崎市河崎にある「里中」と呼ばれる地域で、数十年前から「中」の字を「サ」で囲んだ意匠が使われていたから。

掌にすっぽりと収まるサイズもいい

使用シーンは年に一度開催される地元の祭り。商家の軒先に幕として飾られていたというが、「せっかくのすてきなデザインなのに、年に一度、地元で開催される祭りの時しかお披露目されないのはもったいない」と感じた2人は、より多くの人に見てもらうべく、商品のパッケージに使用することを考案。

実際に形にしたことで、東京などの大都市だけでなく、地方でもすばらしいデザインが生まれていることを多くの人に知ってもらえることになったばかりか、既に故人となっていた意匠考案者である地元神社の神職者家族からも大変喜ばれたんだとか。

伊勢の神様を思わす「御神饌」フレーバー

「伊勢を訪れる若い人たちにも喜んでもらえるお土産品を作りたい」と、神への供え物である塩、米、酒の「御神饌」フレーバーを定番とするクッキーの「サトナカ」(9枚入り/税別645円~)を作り上げた。主原料の小麦粉は三重県産「あやひかり」、酒フレーバーに使う酒かすは県内にある元坂酒造の吟醸酒かす、塩は伊勢市二見で海水から作られた「岩戸の塩」、米粉も三重県産と、地元のものにこだわっているのが特徴だ。

「塩、米、酒、昆布、黒糖」の5種類の「サトナカズ」

さらに現在では、「塩、米、酒、昆布、黒糖」と5種類のサトナカがセットになった「サトナカズ」も販売しているが、この商品ができたきっかけは、取引先から「お歳暮用として5,000円程度の商品を作ってもらえないか」と相談されたことだったという。

要望に応えて2段構成のサトナカズ(60枚入り/税別5,000円)を作成した後、「当然、1段のがあってもいいよね」と販売をスタートした1段のサトナカズ(30枚入り/税別2,500円)が現在の主流商品だ。

サトナカズ1段(30枚入り/税別2,500円)

口にすると心がほっと和む、手作りの素朴な味

昆布は伊勢の酒徳昆布の純白とろろ昆布を使用。黒糖は100%沖縄のものを使用して、市内の小さな工房にて手作業で作っているのだとか。「スタッフは少人数のため、大量には作ることができません。でも、せっかく作るのだから、少量であってもいい素材を使って丁寧に作って届けたいんです」と橋本さん。

「とは言え、ヘルシーなものだけにこだわっているわけでもなく、巷がバター不足であることからマーガリンや外国産のバターでも試作してみたことがあります。外国産のバターを使うと、缶入りクッキーの味になるんですよ。それはそれでおいしいのですが、やはり理想の味にはならなかったため、結局使っていません」。

型抜き中のサトナカ

ちなみに、どの味も素朴で後味も大変いいが、橋本さんが特に気に入っているのは昆布。ほのかなとろろ昆布の香りが楽しく、心なしか粘り気を感じられるところも魅力なのだとか。

最後に、サトナカ、サトナカズに込めた想いを尋ねたところ、まずサトナカズに関しては、「黒糖を含めた全種類のサトナカの味わいを楽しんでほしいですね」との回答。

時には日本の食についても想いを馳せてもらいたい

そして、御神饌でもある塩、米、酒、昆布を使った「サトナカ」各種に関しては、「日本の食の原点となる原料を使って作っているので、単に食べて終わりではなく、一人ひとりが、日本の農産業について考えるきっかけになったらうれしいですね」とのすてきなメッセージ。

というのも、橋本さん自身が米作りをしていることもあり、日本では年々、田んぼの数が減って住宅地へと姿を変えている現実について、想いをめぐらすことが多いのだとか。

橋本さん家の田んぼで稲刈り中の様子

また、伊勢神宮が稲作の神様であることも常に意識しているそうで、「神宮の祭典に使う塩、米、野菜などは全て神宮の御料地で作っているんですよ」などのエピソードも大変豊富。それゆえ、サトナカとの出会いをきっかけに、「日本の農耕や食についてほんのちょっとでもいいので考えてもらえたらうれしいですね」とのこと。

その想いに共感して、早速にでも商品を食べてみたいと思った人は、ぜひwebショップをのぞいてみてほしい。ちなみに、商品のほとんどがwebショップで購入可能だが、サトナカの塩、米、酒が各1枚ずつの計3枚放送された「サトナカ各一」は店舗でのみ購入できるそう。サトナカが生まれた河崎を訪れるついでに、「伊勢に行った証」として手に入れてはいかが?

※記事中の価格・情報は2016年1月取材時のもの