探査機「ニュー・ホライズンズ」による冥王星の観測や、「ファルコン9」ロケットの着陸成功など、さまざまな話題にあふれた2015年が幕を閉じた。そして2016年もまた、数多くの興味深い宇宙開発の話題が待ち構えている。

今回は、今年予定されている数多くのロケットの打ち上げや探査機の活動などの動きの中から、特に注目したいものを紹介する。前回の上半期編に引き続き、今回は7月から12月の下半期と、また具体的な日時は不明、あるいは決まっていないものの、今年中になんらかの動きが予定されているものもご紹介したい。

なお、日時はすべて1月7日時点での予定に基づくものであり、今後延期される可能性もあるので、ご留意いただければと思う。また文末に、ロケットの打ち上げ予定を掲載しているWebサイトを紹介しているので、最新の情報はぜひそちらをご参照いただきたい。

7月4日: NASAの木星探査機「ジュノウ」、木星に到着

2011年8月5日に打ち上げられた米航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノウ」が、5年間の航海を経てこの日、目的地である木星に到着する。

これまで木星は、「ガリレオ」や、また土星探査機「カッシーニ」が木星の近くを通過した際などに観測が行われているが、これらは木星とその衛星からなる木星系を理解することに主眼が置かれていた。しかしジュノウは木星そのものを徹底的に探査することを目指している。

ジュノウはまた、木星より遠くへ飛ぶ探査機では初めて、放射性同位体熱電気転換器(RTG)ではなく、太陽電池を使って電気を作っている。

観測期間は約1年が予定されており、運用終了時には生命が存在している可能性のある木星の衛星に墜落しないよう、木星に落とされることになっている。

木星探査機「ジュノウ」 (C) NASA

9月3日: NASAの小惑星探査機「オサイリス・レックス」、打ち上げ

「オサイリス・レックス」はNASAの小惑星探査機で、小惑星「ベンヌ」から石や砂などのサンプルを持ち帰ることを目的としている。

探査機は打ち上げから約1年後に地球をスウィング・バイして加速し、2018年8月に小惑星ベンヌに到着する。そして観測やサンプル採取を行った後、2021年3月にベンヌを出発し、2023年9月に地球に帰還する予定。なお、地球に帰ってくるのはサンプルが入ったカプセルだけで、探査機本体はさらに別の天体へ行って探査を行う可能性もあるという。

ミッションの目的や工程は、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」に似ているが、オサイリス・レックスはより多くのサンプルを持ち帰ることができる。一方、「はやぶさ2」はサンプルを収めるコンテナを複数持っており、採取した場所によってサンプルを分けることで、きめ細やかな分析ができるようになっている。

小惑星探査機「オサイリス・レックス」 (C) NASA

9月30日: 彗星探査機「ロゼッタ」が運用終了、彗星の地表に着陸

2014年にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の探査で話題となった欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」がこの日、ミッションを終える。

ロゼッタは最後に、彗星の地表への着陸を行うことが計画されている。ただ、ロゼッタは着陸できるようには造られていないため、衝突にも近い捨て身の着陸となる。これには安全、確実に探査機を処分するという意味もある。

彗星への着陸はロゼッタに搭載されていた小型着陸機「フィーレイ」がすでに実施しているが、ロゼッタはより強力な観測機器をもっているため、着陸するまでの彗星地表に徐々に近付いていく間に、フィーレイよりさらに詳細で大量の、画像などのデータが得られることが期待されている。

彗星探査機「ロゼッタ」 (C) ESA

10月19日: 火星探査機「トレイス・ガス・オービター」火星到着、着陸試験機「スキャパレッリ」は火星地表への着陸に挑戦

今年3月14日から25日の間に打ち上げが予定されている欧露の火星探査機「エクソマーズ2016」が、予定どおり打ち上げられれば、この日火星に到着する。

エクソマーズ2016は火星のまわりを周回する「トレイス・ガス・オービター」と、火星地表への着陸技術を実証する「スキャパレッリ」から構成されており、両者は合体した状態で打ち上げられて宇宙を航行し、火星到着の直前で分離され、トレイス・ガス・オービターは火星周回軌道に、スキャパレッリは火星の大気圏に突入し、地表へと降り立つ。

火星到着後、トレイス・ガス・オービターは約7年間にわたって運用される予定となっている。一方のスキャパレッリは着陸技術の試験機であるため、火星地表での活動帰還は3日程度しか予定されていないが、着陸で使われた技術や、得られた知見は、2018年に打ち上げが予定されている「エクソマーズ2018」の着陸船と探査車(ローヴァー)で活用されることになっている。

またトレイス・ガス・オービターは、そのエクソマーズ2018と地球との通信の中継役も務めることになっている。

「トレイス・ガス・オービター」(左)と「スキャパレッリ」(右) (C) ESA

「トレイス・ガス・オービター」から分離される「スキャパレッリ」 (C) ESA