日本では現在、総務省を中心に携帯キャリアによる「販売奨励金」を組み合わせた端末の過度な割引販売に規制をかける動きが活発化しているが、2年縛り契約の商習慣で先行していた米国では、最後のキャリアがこの販売方式を間もなく終了しようとしている。報道によれば、米AT&Tは1月8日をもって2年契約縛りでの販売を終了し、端末代金の分割払い方式へと移行するという。長年にわたって割り引き後の端末価格をアピールしていたAppleのiPhoneなどの製品の動向が気になるところだ。
同件は、Engadgetが昨年の12月30日に報じている。米国では長年にわたって1年または2年契約を条件にした端末の割引販売が行われており、新規ユーザー獲得のための原資になっていた。ところが"Uncarrier"宣言を行ったT-Mobile USAを皮切りに、昨年2015年には最大手のVerizon WirelessとSprintが2年契約縛りでの端末販売スタイルを見直し、月単位での分割販売または端末一括購入方式への移行を行い、店頭での販売価格表示方法を変更している。
具体的には、分割払い期間を事前に選び、通常の月額端末料金に上乗せする形で月々の支払いを行う。ただ、24カ月(2年)をかけて分割払いを行った総額は一括購入の金額よりも若干安く設定されていたりと、わずかながら長期契約者が有利な仕掛けになっていたりする。このような動きの背景には、過度な販売奨励金の上乗せが携帯キャリアの収益を年々圧迫しており、業界全体で見直そうという気運が高まっていたことが挙げられる。最大手のVerizon Wirelessが動いたことで、それが決定的となった形だ。
AT&Tでは、従来ながらの1年契約縛りや2年契約縛りでの割引金額を店頭で示す一方で、2013年より「AT&T Next」という契約プランを設けて業界全体の流れに乗りつつ、ユーザーの囲い込みを行う方向性を示していた。仕組み的にはVerizon Wirelessのものに近いが、Nextでは分割支払い期間とは別に「最低契約期間」が設定されており、この最低契約期間と分割支払期間の間であれば、Next契約ユーザーは所持している(つまりNextで購入した)端末の下取りを条件に(分割支払期間を満了せずとも)Nextのプランを使って新端末の分割購入が可能になる。
Nextの分割支払い総額は、一括購入の値段とほぼ同額もしくは若干安めに設定されている。一括購入や通常の2年縛りと異なるのは、全額を支払う前に現機種の下取りを前提とした乗り換えが可能な期間に入る点だ。そのため、最低契約期間で新端末に乗り換えれば安く端末を維持できる。2年契約という縛りはないが、場合によっては2年契約以上の長期に渡りユーザーにサービスを継続利用させる囲い込み策となっている。
Engadgetによれば、2015年夏時点ですでにAT&Tストア以外の代理店(例えばBest Buyのような量販店やiPhoneを販売するApple Store)での2年契約提供は停止しており、基本的にNextに移行済みだという。今回の通知は1月8日をもってAT&T Storeでの2年契約提供も終了し、全面的にNextへと移行していくという意向だ。1月4日の週は移行期間にあたり、筆者がAT&Tストアや一部店舗を確認した限り、すでにNext主体の端末価格表示方式となっていた。
おそらくだが、これで最も影響を受けることになるのはiPhoneだ。昨年9月のAppleスペシャルイベントでは、全米携帯キャリアのこうしたトレンドを受けながらも「16GBモデルが(2年契約で)199ドル」といった形でiPhoneの販売価格を紹介していたが、これはAT&Tの2年契約プランが残っていたことによる。
今年は全米4大キャリアがすべて販売方式を分割方式へと移行するため、こうした見た目に安いと思わせる価格は提示することが難しくなり、600ドル近いといわれるiPhone本来のキャリア販売価格が前面に露出することになる。市場投入が噂される「4インチ版iPhone」や、9月の発表が見込まれる「iPhone 7」において、どのように価格が提示されるかに注目していきたい。
(記事提供: マイナビニュース・携帯ch)