Twitter上で盛り上がっている話題の言葉・トレンドワードで、上位を占めるテレビドラマが増えている。特に今年はキャスト自らSNSを活用し、奏功した作品が目立った。最終回に約26万件もの関連ツイートを記録した『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(関西テレビ・フジテレビ系)は、視聴率を2桁台に巻き返し、夏の間はSNS上で『恋仲』(フジテレビ系)のシーンを再現する投稿が続出する"恋仲現象"も発生。ドラマとSNSは、親和性が高いのか――。

関西テレビ・フジテレビ系『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』(左から 菜々緒、松坂桃李、木村文乃)=フジテレビの動画サイト「FOD」で配信中

『サイレーン』ハッシュタグにキャストも参加

盛り上がりの頂点をラストでみせた『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』は、SNS上の仕掛けが一役を担った。主演の松坂桃李をはじめ、同ドラマで悪女ぶりが話題になった菜々緒らキャスト陣に加えて、主題歌を歌うAnlyまで参加し、関係者自らがTwitter上でドラマに関するコメントを発信し、大いに盛り上げた。その結果、制作の関西テレビの発表によると、最終回の放送日(12月15日0時~24時)の『サイレーン』に関するTwitterの投稿数が、25万9,652件に上ったという。1ケタ台が続いていた視聴率も最終回は2桁に戻し、11.5%をマークした(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。

予想以上の反響だったのだろう。そんな様子が伺える制作局・関西テレビのコメントが、公式Twitterアカウント(@kantele)に残されている。


"#今夜は桃李に守られたい" これは、この作品に懸ける桃李さんの想いを目の当たりにして心の底から自然に湧き出た言葉でした。毎週4パターンのタグ発信は初めての挑戦でしたが、直接頂く皆さまからの声にホンマに励まされました。


この「タグ発信」とは、「今夜は桃李に守られたい」というようなワードに「#」を入れて、「#今夜は桃李に守られたい」と投稿すると、そのワードが記号として認識され、共感する人同士が閲覧しやすくなるというTwitterの仕組み「ハッシュタグ」のこと。『サイレーン』の場合は、ドラマファンにしか分からないようなワードを、あえてハッシュタグで発信し続けたことで、キャストと制作スタッフ、視聴者との一体感を作り出していったようだ。

SNSを利用して視聴者を囲い込んだ事例は、ほかにもある。『コウノドリ』(TBS系)は、Twitter上で放送開始前に写真投稿の「カウントダウンフォト」という企画で話題を作った。主演の綾野剛をはじめ、キャストやスタッフ、視聴者も参加する形で、放送前に写真投稿を募り、Twitter、Facebook、写真投稿サイトのInstagramなど、SNS発信を多面的に展開した。

また、『恋愛時代』(読売テレビ・日本テレビ系)は、注目の動画配信サービス「LINE LIVE CAST」を活用。放送中に主演の比嘉愛未と満島真之介が、ストリーミング上で自ら生実況し、視聴者の質問にも回答するといったドラマとしては初の試みを行った。

若者の間で"恋仲現象"が発生

フジテレビ系『恋仲』(左から 本田翼、福士蒼汰)=フジテレビの動画サイト「FOD」で配信中

SNS上での話題作りが成功した今年のドラマと言えば、やはり月9の『恋仲』(フジテレビ系)は外せない。最終回の生放送の時間帯で、通行人役として出演したHKT48の指原莉乃に、主演の福士蒼汰とヒロインの本田翼が2ショット写真を撮ってもらい、福士がその写真を放送内で実際に投稿したツイートが、今年の全日本語アカウントの中でリツイートされた回数2位を獲得(12月28日現在で約14万2,000リツイート)。マイナビティーンズ「ティーンが選ぶトレンドランキング2015」の流行した"コト"部門でも1位に選ばれた。

同作は、若年層を取り込み、夏休み中の学生などが、ドラマを視聴しながら、自分たちのリアクションを撮影・投稿し、「ドラマの視聴を夏の思い出としてシェア」することが流行。また、シーンを丸ごと再現した動画を投稿するものも見られ、男子同士のパロディやキスシーン、花火文字などが続々と投稿された。それを福士ら出演者が、公式のSNSやブログでリアクションすることで、ひとつの現象としてさらに注目を集めたのだった。

このようなドラマとSNSの親和性が高いことを証明する事例が増えてきた背景には、ドラマ全体の視聴率の低迷や、若年層のテレビ離れも関係している。つまり、この改善策のひとつとして、SNSが活用されているのだ。

テレビ視聴者ターゲットのTwitterサービスもスタート

Twitter社側もこの動きに応じるかのように、今年2月からテレビ視聴者をターゲットにプロモーションツイートを配信できるサービス「テレビターゲティング」を開始した。調査によると「テレビを見ているユーザーの5人に4人がTwitterを使いながらテレビを視聴したことがある」という。

例えば、昨年は『サッカーワールドカップ』でのツイート数が、32日間の累計で6億7,200万ツイートを突破し、『NHK紅白歌合戦』に関するツイートも、放送開始1時間前から放送終了30分後までの間に、486万ツイートを記録した。また俗に"バルス祭り"と言われる『金曜ロードSHOW! 天空の城 ラピュタ』(日本テレビ系、2013年8月2日)の放送時には、クライマックスで「バルス!」と主人公たちが唱えるシーンに合わせて、1秒間に14万強ものツイートを集め、ツイート数の世界記録が作られた。

視聴率20%が関東地区だけで約364万世帯(推定)という規模と比較すると、SNSで爆発したと言われる数十万、数百万の反応でもわずかな単位。しかし、視聴率にもつながるほどの規模の事例が増えていったことで、テレビ局も積極的に活用していく動きとなった訳だ。

世界観を共有しやすいドラマなら、なおさら親和性も高くなる。今後もSNS使いが増えていくことが予想されるイマドキドラマの話題作りに注目したい。