そのほか同社では、データ活用により顧客との接点を拡大し、総合的な満足度向上を目指す取り組みも実施している。 たとえば、全体の利用者数は増加しつつも、月2回以上利用するヘビーユーザーが増えない実態が判明したことから、会員制度「acureメンバーズ」を開始。エキナカ自販機ならではの商品展開に加え、ロイヤルティの向上を目指して次世代自販機によるacureメンバーズ向けサービスをスタートした。
この自販機では、Suicaでの購入者に対するポイントの自動付与ができるほか、利用回数に応じて自販機の表示を変化させることができる。また、acureメンバーには期間限定で商品プレゼントを行うことも開始した。
結果、会員数は着実に増加し、リピート率増加など自販機利用にも変化が生じ始めているという。
営業戦略の具現化に向け“現場力”を促進
加えて同社では、営業戦略の具現化に向けた“現場力”を促す取り組みも行っている。「オペレーターSV」の導入により、ロケーション特性に応じて3割の商品選定を現場の裁量に委ね、時間帯売上や属性構成比といった現場でのデータを活用。現場力の活性化を競うオペレーター向けイベント「仮説検証甲子園」の開催なども実施している。
さらに本間氏は現場でのデータ活用例として、東京ディスニーランドがある舞浜駅で行われた改善を紹介した。
レジャー需要が高い舞浜駅の場合、時間帯売上データから22時に売上ピークがあることが判明。商品補充タイミングの最適化で売切れによる機会ロスを削減し、2013年盛夏期の売上前年比は7月で130%、8月で120%まで伸長させることに成功した。
また新たな挑戦として、季節ごとのホットとコールドの切り替えタイミングに関する解析も実施している。こちらは経済学者チームとの共同研究で、年間の気温データとPOSデータから「ホット需要の強さ」でクラスタリングし、需要を推定するというもの。最適な切り替えタイミングのシミュレーションと売上効果の算出を行い、この分析結果を現場に反映。今後もデータの蓄積と再検証を繰り返しながら、精度向上を図っていくとしている。
事業環境変化により仮説構築と対策の実施
最後に本間氏は、事業環境変化による仮説を構築し、対策を実施することにも言及した。
たとえば消費増税後の環境変化に対しては、データ分析により高付加価値・高価格帯の販売好調商品を見つけ出したり、新たな価値を創造するオリジナル商品ブランド「acure made」の設立などで対応。この商品開発では、飲用シーンの徹底分析や利用者意見の反映、利用者とのコミュニケーション強化を通じて、“共に創る”ことを重視しているそうだ。
本間氏は「データ分析を通じて、お客さまの自販機利用シーンや飲用シーンが見えてきました。今後は不特定多数およびターゲットをより意識した両面からのアプローチを推進するとともに、お客さまとの接点を連携しながら総合的な顧客満足度の向上を目指していきます」と語り、講演を締めくくった。