生き物を模したお菓子は全国に数あれど、函館銘菓の「いかようかん」(1パイ税込1,188円)ほど芸が細かいものはそうそうないだろう。ぎょろっとした眼、ボディのぬめり具合から足先の透明感にいたるまで全てがリアルすぎて、口にして甘みを確認するまでは、それがようかんであるとは到底信じられそうにないほどである。
商品ディスプレイを見た客が商品化を要望
このユニークな菓子を作っているのは、精巧な和菓子やフレッシュなケーキなどをそろえた「はこだて柳屋」(北海道函館市)だ。この店の看板商品とも言える「いかようかん」が誕生したのは平成9年(1997)のこと。
「その年、改装工事にあたって仮店舗で営業していたんですが、当時の和菓子職人が殺風景だからとイカを模したようかんをつくって店頭に飾っていたんです」。そう教えてくれた同社のスタッフによると、ディスプレイを見た客から「商品として販売してほしい」と要望があり、急きょ商品化を決めたのだという。
とはいえ、写真通りの精巧な作りである。手作業で仕上げているため大量生産が難しく、1日50パイ限定で販売しているため、確実に手に入れたいなら事前予約するのが良さそうだ。
色、照り、形まで限りなく本物を目指す
手作りする上でこだわっていることを聞いてみると、「デフォルメせずにグロテスクであっても本物に近づけることですね」との回答。色、照り、形まで限りなく本物に近づけるべく丁寧に作業しているため、誰もが驚く商品に仕上がっているのだ。
驚かされるのは一度ではない。二度目の驚きは味。つまり、口にすると見た目とギャップがありすぎて驚くというわけだ。「中のあんはコーヒー風味に仕上げています。見た目はグロですが味はおいしいと評判ですよ」と店側もあっけらかん。グロさを極め、味にもしっかりとこだわっているから、お土産にしても喜ばれること請け合いだ。
実際、地元・函館の客はしばしばお土産として購入していくというが、「ご購入者本人は食べたことがないという人が多いですね」というなんだかほほえましいエピソードも。しかも、JR函館駅周辺には店舗がないため、時間をかけて本店まで足を運ぶ人も後を絶たないのだとか。
函館を訪れる機会があれば、ぜひ、お土産用・自分用の2箱買いを楽しんではいかがだろうか。箱の上部を開くとイカが飛び出し、"夜明けの函館山"が姿を現すパッケージゆえ、旅行後、旅の思い出を振り返るのにも一役買ってくれそうだ。
※記事中の価格・情報は2015年12月取材時のもの