「サザエさん通り」を中心に、普遍の日本家庭・サザエさん一家がそこらじゅうにいる商店街。そんな「桜新町商店街」(東京都世田谷区)は不思議なことに、いわゆる商店街的な雑多な雰囲気がない。しかし殺風景ではなく、閑静で落ち着いていてぬくもりもある。そしてここには、ぜひ味わいたいスイーツたちも。そんな、ゆるい休日が過ごせそうな桜新町商店街を紹介しよう。
サザエさん一家がお出迎え
降り立つは東急田園都市線「桜新町駅」。渋谷駅からほんの10分ほどの場所である。駅の出口は北口、南口、西口と3カ所。そのいずれも階段を上ってみるとすぐに磯野家の人々の銅像を発見できるだろう。なかでもオススメなのは西口。ここにはサザエさんほか、一家全員が並んでいるのだ。
ところでこの桜新町、名前の通り桜の木が並んでいる。春になると通りが桜色に染まる名所なのだそうだ。桜は、大正2年(1913)にこの地域が関東初の高級別荘用地として分譲地造成されたことにより植えられたのが始まりとのこと。
その"高級"の雰囲気が今も漂う街の落ち着きのもととなっているのだろうか。筆者が訪れたのは季節外れの12月だったが、葉の落ちかけた桜並木もなかなかに美しく、残念な気分などはまるでしなかった。
西口から銅像を通過し、大通りから直角に伸びる道が桜新町商店街のサザエさん通りだ。そこに導く矢印やサザエさんのイラストがあちこちにあるため、迷うことはないだろう。
サザエさんを探せ!
「ウォーリーをさがせ! 」ならぬ、「サザエさんをさがせ! 」。しかし、探すまでもなく、いたるところにサザエさん一家がいる。それはお店の前に看板のように立っていることもあるし、配電盤の裏にいることもある。たくさんいるのが分かっていても「あ! 」と見つけるとちょっとうれしい気分になるのが面白いところだ。
なぜにサザエさんがそんなにいるのかというと、サザエさんの作者・長谷川町子氏が生前この街に住んでいたから。30年前の「長谷川町子美術館」の開館を機に、サザエさんの使用をお願いしたのだそう。以降、通りの入り口から美術館までの400mはサザエさんづくしになった。
長谷川町子美術館限定スイーツ&グッズも
ところでこの「長谷川町子美術館」はぜひ訪れてみたいところのひとつ(入場料600円)。長谷川氏の美術コレクションを期間ごとに変更して展示しているほか、サザエさんやいじわるばあさんの原画、そして磯野家の精巧な模型がある。いわゆる昔の日本の家で、昭和の暮らしを見るにも面白い。
物心ついたころからサザエさんをテレビで見てきた筆者だが、部屋の配置を全体として見たのは初めてだった。それぞれのシーンで断片的だったサザエさんの家は「こうなっていたのか! 」と、あらためてサザエさんを知ったような気がしたものだ。
ここで手に入れたいのは売店の美術館限定グッズ。ファミリーケーキ(450円)は磯野家キャラの形をした小ぶりな人形焼きのようなもの。ワンコイン以下なのもうれしい。また、2015年は開館30周年で、記念の手ぬぐいやふろしき(各1,000円)300個が限定販売されている。残りわずかとのことだ。
美術館周辺マップ、サザエさん銅像マップ、周辺施設めぐりマップなどもここでもらっておこう。ちなみに美術館のすぐ横には「サザエさん公園」がある。小さいながら庭園のようで、この時期だと紅葉が美しい。もちろんサザエさんもいる。
サザエさんのカフェでまったり
商店街で立ち寄りたいお店が「Lien de SAZAESAN(リアン・ドゥ・サザエさん)。サザエさんモチーフのスイーツやグッズが販売されている。持ち帰りもできるため、食べ歩きしてもいいだろう。
ここでの一番人気は「サザエさん焼き」。サザエさん、波平さん、タマの形の今川焼のようなものなのだが、中身が定番のあんこのほか、チーズもんじゃやハムポテトなどの変わり種もある。キャラによって中身が違うため、結局全部買いたくなってしまうかもしれない。ひとつ150円~200円と手軽なのもうれしい。
ミニサイズのサザエさん型パンケーキもオススメ。生クリームとハチミツ、もしくは自家製ジャムが付いてくる。この冬のジャムはアップルジンジャーだそうだ。こちらも120円という価格でついつい食べ過ぎてしまいそう。
キャラクターのカフェながら、ナチュラルな内装で子供っぽい雰囲気は皆無。音楽はサザエさんのジャズバージョンなどで、日本の定番お茶の間アニメの主題歌と思えないほどお洒落さだ。コーヒー片手にまったりしてみてもいいだろう。
付近には「せたがや百景」にも選ばれた大正時代の給水塔「駒沢給水塔」やたくさんの美術館、馬事公苑などもある。今度の休日は、サザエさんスイーツを片手に桜新町を散歩してみてはいかがだろうか。
※記事中の価格・情報価格は2015年12月取材時のもの。価格は全て税込
筆者プロフィール: 木口 マリ
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。旅に出る度になぜかいろいろな国の友人が増え、街を歩けばお年寄りが寄ってくる体質を持つ。現在は旅・街・いきものを中心として活動。自身のがん治療体験を時にマジメに、時にユーモラスに綴ったブログ「ハッピーな療養生活のススメ」も絶賛公開中。