「男性不妊」の治療法とその費用は?

前編では、「男性不妊」の検査であるフーナーテストの内容と、テストが不良だった場合に行われる人工授精について解説をしました。後編では、「顕微授精」と「精液検査」についてお話しします。

顕微授精とは?

フーナーテストで良好の場合や人工授精を行った場合は、精子は卵管に到達しているはず。それでも妊娠しない場合は、卵子が卵管に入っていない可能性を考えます。対策としては、体外受精して、卵子を確実に精子と出会わせます。

また、精子が卵子と受精していない可能性も考えます。これは「受精障害」といって、原因不明不妊の約10%にあたります。精子は、卵管内で卵子と出会うと、卵子の殻を溶かす酵素を出して、卵子の中に侵入します。この酵素がうまく出ないと、精子が卵子の中に入れません。受精障害の方には、「顕微授精」を行うことで約80%は受精可能になります。もちろん、人工授精では難しいと考えられる運動精子数の場合も顕微授精の適応となります。

顕微授精での妊娠は、1992年に世界ではじめて成功しました。顕微授精以前は、精液中に運動精子の数が少ない方で体外受精で成功しない場合、第三者の精子による人工授精しか方法がありませんでした。今では、日本でも2011年までに、約8万人の赤ちゃんが顕微授精で生まれています。

顕微授精では、卵子に直接精子を注入します。手順としては、「卵胞を発育させる→採卵する→顕微授精する→受精卵を胚移植する→余剰卵を胚凍結する」という流れです。なので、採卵と顕微授精の費用が必要になります。自費診療のため、施設により費用は異なりますが、一般に、採卵周期の体外受精・胚移植の費用は35~55万円程度ですが、顕微授精の場合はさらに10~20万円程度必要です。凍結した胚の移植だけですと10万程度のことが多いでしょう。また自治体は、年収制限はありますが、採卵に15万円、融解胚移植に7万円などといった不妊治療助成金出しています(金額および適応は住民票のある自治体の保険所にご確認ください)。

精液検査の場合

男性の検査には、フーナーテストのほかに精液検査もあります。精液検査では、精液の量、精液中の精子の数、運動率、奇形率をカウントします。もし、精子がゼロの場合、「逆行性射精」といって、尿中に精子がいることもあるので、射精後の尿を回収して尿中に精子がいるかどうか調べます。

尿にも精子がいない場合は、「精巣内精子採取術」が適応になります。麻酔して精巣の一部を生検する方法で、その中に精子がいれば、回収して顕微授精に使用します。精液中にまったく精子がいない場合でも、50%くらいの確率で精巣内から精子を回収できます。採卵、顕微授精、精巣内精子採取術の費用が必要になるので、60~100万円程度かかります。

男性不妊の検査と治療法について、ご想像いただけましたでしょうか。なかなか子どもを授からないことで悩んでいるカップルの方は、まずは検査を受けてみることをお勧めします。次回は、「女性不妊」についてお話しします。

※自費費用は、施設により異なります
※保険には診察料などが別途必要です
※画像と本文は関係ありません

記事監修: 船曳美也子(ふなびき・みやこ)

1983年 神戸大学文学部心理学科卒業、1991年 兵庫医科大学卒業。産婦人科専門医、認定産業医。肥満医学会会員。医療法人オーク会勤務。不妊治療を中心に現場で多くの女性の悩みに耳を傾け、肥満による不妊と出産のリスク回避のために考案したオーク式ダイエットは一般的なダイエット法としても人気を高める。自らも2度目の結婚で43歳で妊娠、出産という経験を持つ。2013年10月9日、「婚活」「妊活」など女性の人生の描き方を提案する著書『女性の人生ゲームで勝つ方法』(主婦の友社)を上梓。