12月7日(米国時間)、MicrosoftはWebブラウザー「Microsoft Edge」のJavaScriptエンジンを、「ChakraCore」としてオープンソース化すると発表した。今回はMicrosoftとオープンソースの関係について考えてみる。
2000年代のMicrosoftはオープンソース陣営(特にLinux)をライバル視していた。当時のCEO、Ballmerは2001年に「GNU GPLはガンのようなものだ」といった主旨の発言をして物議を醸していた。あれから14年。Nadella体制では「Microsoft loves Linux」とオープンソースへの取り組みを強くアピールしている。
さて、Microsoftがオープンソースに関与し始めたのは、いつの頃からだろうか。調べてみると2010年7月の「OpenStack」プロジェクトの支援から始まり、2013年1月には「Visual Studio」などでオープンソースのバージョン管理ツール「Git」のサポートを開始した。
そして、2014年11月の無償版Visual Studio Communityや.NET Framework、先月11月のVisual Studio Code、ChakraCoreのオープンソース化に至っている。さらに12月に入って、「Windows Live Writer」を「Open Live Writer」に改称すると同時にオープンソース化することを発表した。
オープンソースではないが、事実上無償で使用できる「Visual Studio Community」。これ以前は多くの制限や機能を限定した「Visual Studio Express」シリーズを無償提供していた |
2015年11月に開催された「Connect(); 2015」では「Visual Studio Code」ベータ版とオープンソース化が発表された。スピーカーはMicrosoft Cloud and Enterprise Group EVPのScott Guthrie氏 |
このようにオープンソースへの傾倒が著しいMicrosoftだが、同社の方針転換の鍵となるのが「自身が変革を求める未来」だ。「Microsoft Azure」はマルチクラウドであり、その上で動作している仮想マシンの25%はLinuxだという。12月2日には「Debian GNU/Linux」をHyper-V上でサポートすると発表し、ちょっとした注目を集めたばかりである。
Debian GNU/Linuxは筆者も長年使い続けてきたLinuxディストリビューションであるため、仮想マシン第2世代への対応を待ち望んでいたが、SUSE Linux EnterpriseやRed Hat Enterprise Linuxといった商業系Linuxディストリビューションだけではなく、完全なコミュニティベースで開発が続けられてきたDebian GNU/Linuxをサポートするのはちょっとした驚きだった。つまりMicrosoftのオープンソースに対する姿勢はそれだけ真剣なのである。
2015年12月現在、Net ApplicationsのデータによればWindows全体のシェアは、91.39%とMacやLinuxを歯牙にかけないほど圧倒的な数値だ。それでも日本マイクロソフト関係者は「WindowsやOfficeだけの時代ではない」と変革の必要性を理解している。筆者にとって印象的なのは、Microsoft CTOのMark Russinovich氏が「Windowsをオープンソースにする可能性はある。それが新しいMicrosoftだ」と発言したという海外報道だ。
Microsoft CTOのMark Russinovich氏。古くからのWindowsユーザーには、「インサイドMicrosoft Windows」の共著者、もしくはWindows Sysinternalsの作者との紹介がわかりやすい |
Russinovich氏といえばWindowsの専門家として多くのツールや著書を発表してきた人物だ。Microsoftが2006年にWinternals Softwareを買収した際に入社した経緯がある。内外からWindowsを見てきたRussinovich氏の発言は重く、信頼性も高い。もちろん今日明日の話ではないが、MicrosoftがWindowsに頼らない新たなビジネスモデルを確立した暁には、Windowsがオープンソース化されるその日を迎えるのだろう。
阿久津良和(Cactus)