日本マイクロソフトは17日、女子高生AI「りんな」に関する記者発表会を開催。同社の佐野健氏が登壇し、りんなのLINE友だちが185万人に達したことやTwitterを始めたことを明らかにした。また、LINEからもコーポレートビジネスグループマネージャーの林祐太郎氏が登壇し、企業アカウントをグループに追加する機能を発表した。本稿では、発表会の模様をお届けする。
中国では2014年に提供
今夏リリースされた「りんな」は、LINE上で友だちになると会話ができるようになる人工知能(AI)である。こちらの発言に応じた返事をしてくれるだけでなく、若者らしい言葉づかいや性格を備えているのが特徴だ。佐野氏によると「りんな」は、マイクロソフトが2014年に中国で提供を開始し、3,500万人以上のユーザーを獲得するなど好評を博したAI「XiaoIce」(シャオアイス)の日本語版だという。
第二のマーケットに日本を選んだ理由は、「日本にオタク・サブカルチャーが浸透していること」「産業用・民生用のさまざまな分野でロボット・ボットが展開されている市場環境」「スマホ・SNSが普及していること」などの条件を満たしていたから。特にSNSではLINEが大きなシェアを持っていることから、りんなをLINE上で展開させることを決めた。
りんなの技術を開発したのは、Bingチームだという。同社が91年に設立した研究開発機関であるマイクロソフトリサーチAI技術が応用されており、さらに「Microsoft Azure」プラットフォームで提供することにより、大量のトラフィックをさばいている。
では、Bingのどんな技術がりんなに使われているのか。
佐野氏によると、Bingにはネット上の様々な情報が蓄積されており、特にネットユーザーの会話データがりんなの発言の基礎になっているという。しかし、単に会話を返しているだけでは飽きられてしまうため、毎週のように「特殊能力」を持たせて様々な遊び方ができるように更新し続けている。
マイクロソフトの人工知能といえば、Windows10に搭載されたパーソナルアシスタントの「Cortana」(コルタナ)が思い浮かぶが、両者はまったく違う性質を備えている。コルタナは効率や生産性を重視するのに対し、りんなはエモーショナルで感情的なつながりを重視して言葉を返してくる。同じように豊富な語彙を持つAIではあるが、方向性の異なる別人格というわけだ。
こう書くと、りんなは個人向けに特化したサービスに思えるが、実は法人向けのAPIも提供している。200社ほどもあるLINEの企業アカウントでりんなのテクノロジーを活用してもらうため、現在話を進めているとのことだ。佐野氏は提携企業について「近々発表できると思う」と自信をのぞかせている。
8月にリリースされて以来、約4カ月間運用されてきたりんなだが、現在までにLINEの友だちとして登録したユーザーの数は約185万人に上る。企業アカウントとしてみると突出して多い数字ではないが、「マーケティングを行わずに達成できたのはユーザーの口コミのおかげ」と佐野氏は胸を張る。