環太平洋連携協定(TPP)交渉の結果、米国やカナダなどにおいて日本酒の関税が撤廃されることになった。2014年の日本酒輸出額は115億円で過去最高。政府も日本酒の海外輸出を後押しするが、まだまだ市場規模は小さく、その普及が大きな課題だ。
一方で国内の日本酒消費量は、1973年頃をピークに右肩下がり。近年は当時の1/3ほどにまで減少している。国税庁によると2013年の国内成人1人あたりの日本酒(清酒)消費量は、一升瓶で3本を少し超える5.6リットル。前年5.7リットル、前々年の5.8リットルと比べれば微減だが、2003年が8.1リットルであったことをみれば10年で3割の減となる。
ちなみに県別でみると、日本酒ナンバー1の消費量は新潟県の13.3リットル、次いで秋田県の9.7リットル、そして山形県の8.7lリットルとなる。他の酒類はといえば、焼酎(単式蒸留)は鹿児島県 26.0リットル、宮崎県 20.0リットル、熊本県 10.8リットルの順で、ビールだと東京都 43.0リットル、大阪府 30.4リットル、高知県 29.4リットルといった数字になる。
こうした状況に日本酒業界も、沈みゆく船と諦めているわけではない。
蔵元も変化の時代に
いくつか例を挙げれば、オバマ大統領が来日した際の手土産にも選ばれ、アニメ「エヴァンゲリオン」の作中にも登場する獺祭(旭酒造・山口県)は、一時は倒産も危ぶまれる経営状態から、脱杜氏、IT化を推し進めて国内外ともに高い評価を得る純米大吟醸酒の酒蔵へと生まれ変わっている。
新政酒造(秋田県)は、東大卒の8代目によって普通酒主体の酒蔵から純米造りの蔵へと大きくその姿を変えた。協会六号酵母の発祥蔵でもある新政のNo.6シリーズやCOLORSなど意欲的な日本酒を造り出したほか、秋田県内の蔵元から若手5人が集まって「NEXT5」を結成、酒造りの主要工程をそれぞれが分担して共同醸造するという試みにも多くの注目が集まっている。
誰もが知る日本酒の久保田を造る朝日酒造(新潟県)は、今春、銀座に直営店舗「久保田」を開店した。淡麗辛口として広く知られるブランドを持ちながらも、新たな出会いや気づきを酒蔵自身が伝えていく試みだ。
この他にも多くの酒蔵や団体がさまざまな取り組みを行っており、メディアで目にする機会も多いことだろう。こうした取り組みは酒造りの側からだけではない。酒販店や飲食店においても、日本酒との新たな出会いや楽しみを目指し新たな業態や展開をみせている。