NHKのテレビ・ラジオイタリア語講座に出演されていたマッテオ・インゼオさん。青山の教室「ベリタリア」で、イタリア語で料理も教えています。さらにペラペラの日本語力を生かし、日本でナレーションの仕事をしたり、ファッションモデルの仕事もしていたりと幅広く活躍中。ローマから車で1時間ほどのラティーナの街で生まれ育ったマッテオさんは、どのようにして日本で働くことになったのでしょう?
■これまでのキャリアの経緯は?
子供の頃から外国語に興味がありました。4歳のとき、母の親戚がニューヨークを訪ねてきたときに知らない言葉を話している大人たちが不思議でたまらなかったのを覚えています。それから英語の勉強をするようになって、高校も外国語に強い学校に進み、さらにフランス語やドイツ語も学びました。ローマ大学に入学して専攻したのは、東洋文学部日本文学科。なぜ、いきなり日本語? と思うかもしれませんが、10歳から空手を習っていて日本人の先生にも年に何回教えてもらっていたし、テレビで日本のアニメを見て育っていますから、日本語や漢字が身近だったんですね。でも、4年間勉強しても、ちょっとしか話すことができなかった! そこで卒業後に日本に行く計画を立てました。
利用したのは、自治体国際化協会が総務書、外務省、文部科学省と協力して実施しているJETプログラム。日本と外国の相互理解を深め、地域の国際化促進のために、外国人が語学指導助手や国際交流員として日本で働ける制度です。大学を卒業して2カ月後には合格し、2002年8月に来日。配属先は群馬県の前橋市役所でした。ここはイタリアのウンブリア州オルビエート市と姉妹都市なんです。
地元のイベントで国際交流の手伝いをしたり、2つの都市の市長さんのコミュニケーションを手伝ったりするのですが、とにかく最初は日本語がまったくわからなかったです。もじもじしていると「電話とって!」とか叱られたり。でも、同僚の皆さんも仕事が終わるとカラオケや飲みに連れて行ってくれて、この1年で日本をディープに知ることができました。1年の勤務が終わりに近づくと、「もっと日本にいたい! 次は東京で働く!」という意志が固まっていて、語学学校に履歴書を送りまくった結果、今、働いているベリタリアのほか、もうひとつの語学学校、NHK文化センターで職を得ることができました。
■現在のお給料について教えてください。
イタリアの平均月収がたぶん1,500ユーロ(約20万円)くらいだと思うから、それよりは上なことが多いです。でも自営業なので、収入が安定していないと不安になることもあります。休めば、それだけ収入が減るわけですから。でも、誰かの下で小さくなって働くのは嫌いなので、今の自由なスタイルはやめられません。
■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?
自分が日本語を学びたくて、1~2年の滞在のつもりで日本に来たのですが、今の仕事を始めてから、教えるのが好きな自分を発見しました。基本的にはイタリア語を教えるのが仕事なんですが、教えるシチュエーションは学校だけでなく、イタリアの家庭料理を作りながらだったり、テレビやラジオのスタジオだったりと変化に富んでいます。だから、毎日飽きることがないんです。生徒さんもサッカー好きな人、オペラの勉強をしている人、ファッションや芸術関係の人といろいろですしね。
■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?
ということで、嫌だと思うことはありません。