IEEE802.11adは、60GHz帯を利用する無線LANの標準規格で、直進性が高く、大容量コンテンツの転送に向いている。Snapdragon 820ではこの11adをサポート。11acの2.4GHz帯、5GHz帯に加えて60GHz帯という「トライバンド」で利用できるようになる。基本的に近距離での送受信で、同じ室内にアクセスポイントがあれば11adを使い、部屋から離れた11acで繋ぐ、といった動きになるようだ。

デモでは、11acのSU-MIMO(Single User MIMO)で116Mbps、MU-MIMO(Multi User MIMO)で165Mbpsだった通信速度が、11adでは2.691Gbpsという高速通信を達成。実に11.2倍という通信速度となっており、説明員は「マルチギガビット(数Gbps)の速度を実現する」とアピールしている。

11acと11adの速度比較。一番右側が11adで、2Gbpsを超える速度を実現している

デモで使われていたデバイス。リファレンス端末だ

この高速性を生かし、11adでは4K動画のストリーミング、キオスク端末でのP2Pでの大容量データのファイル共有、ドッキングステーションを使って周辺機器をワイヤレス化する、といった用途が検討されている。

すでに日本国内でも60GHz帯の運用に関して法的検討も進められており、説明員によれば来年早々にも対応アクセスポイントがリリースされる予定で、国内でも年末には登場する見込みだという。Qualcommでは、すでに日本メーカーなどとも話を進めているそうだ。

もう1つのデモは、11adを使ったワイヤレスドッキングステーション。スマートフォンと11adで接続し、大画面ディスプレイとドッキングステーションを有線で接続して、スマートフォンの画面をディスプレイに表示するというワイヤレスディスプレイのデモだった。

左がワイヤレスドッキングステーションのリファレンス。中央のスマートフォンから11adで画面を伝送している

4Kビデオもストリーミングで表示できている

11adはレイテンシも短いため、スマートフォンで操作した結果がすぐにディスプレイに反映される。転送容量も大きいため、4Kストリーミングでも問題なく表示できるレベルであることが紹介された。マルチスクリーンにも対応するなど、ワイヤレス環境が実現できる。こうしたドッキングステーションは「すぐに」(説明員)市場に登場する見込みだ。説明員は、マイクロソフトのContinuum対応アダプターの開発なども例示する。

最初に対応製品が出るのは中国の見込みで、これは「オープンマーケットでキャリアの意向が関係ない」(同)からだそうだ。