DX
2017年末、Global 2000企業のうち3分の2のCEOが、DXを企業戦略の中心に据える
IDC Japanのリサーチバイスプレジデント 中村智明氏は「DXイニシアティブを活用する競合他社の出現により、どの業界でも上位20社のうち3分の1が、3年以内に崩壊に追い込まれる」と示唆した。これに対し、企業はどのように対策する必要があるのか? 中村氏は「Chief Digital Officer(CDO)を設置し、DXイニシアティブを推進する専門の組織をつくるべき」と言う。またITベンダーは「業務改革、人材活用戦略の策定、ビジネスエコシステムにおける協業戦略など、顧客にとってよきコンサルタントになるよう近づいていくことが重要」とした。
第3のプラットフォームIT
2017年には国内企業のIT支出額の33%以上が第3のプラットフォームテクノロジー、ソリューション、サービスに費やされ、2020年には45%を超える
2016年以降、すべてのDXイニシアティブに向けたIT投資は第3のプラットフォーム上での投資となり、第3のプラットフォームへの支出は2020年まで、年平均成長率(CAGR)5%以上で増加する一方、第2のプラットフォーム投資はCAGR3%で減少するという。第1のプラットフォームはメインフレームと端末、第2のプラットフォームはクライアントサーバーシステム、そして第3のプラットフォームは、モバイル、ソーシャル、ビッグデータ、クラウドの4要素で構成されるとIDCは定義している。
このような状況に対して中村氏は、「多くのCIOが第3のプラットフォームへの移行をためらっているが、その懸念は副次的。移行しないという判断ではなく、どう移行するかが課題」とし、ITベンダーに対しては、「顧客のDXイニシアティブに付いていくのではなく、リードしていくことが役目」とした。
クラウドコア
2017年までに、国内IT支出の20%以上はクラウド関連となり、2020年にはITインフラストラクチャー支出の30%以上、ソフトウェアおよびサービス支出の40%以上となる
海外では、すでにすでにクラウドへの支出が50%を占めるという。中村氏は「ITの最良の解はクラウドにあるということを常識にしないといけない。また、すべての企業がクラウドサービスプロバイダになる可能性がある。産業特化型のシステムをつくってうまくいけば、そのシステム自身を同業他社やエコシステムに売って商売しようという話になるだろう。クラウドはIT課題ではなく、経営課題である」と述べた。そして、ITベンダーに対しては、「2018年までにクラウドファーストを完了することが"生き残りの条件"」とした。
イノベーションキャパシティ
2018年には、DX戦略を追及する企業で、ソフトウェア開発能力が今の2倍以上に伸び、コーダー(ソフトウェアプログラマー)の3分の2が、戦略的DXアプリケーションおよびサービスを手がける
中村氏は、「すべての企業がソフトウェア企業の性格を強める」と述べた。また、開発リソース不足によって、今後差別化につながらない、第2のプラットフォームから第3のプラットフォームへの移行については、企業はアウトソースされると予測。この時、ITベンダーは「DXイノベーションプロバイダー」となるのか、「第3のプラットフォームへの移行プロバイダー」となるのかが、重要なポイントだとした。
「どちらも需要があるが、valueが違う。この両方のビジネスに対してどういったポートフォリオを描くかが重要」(中村氏)
社内外の「データパイプライン」
2018年、戦略的なDXイニシアティブを実施する企業では、外部から社内へのデータソースの数が現状の3~5倍以上に増加し、市場へのデータの配信料は100倍以上に増加する
すでに、日本でも大企業の6~7割はなんらかの外部データを購入し、自社内部のデータを組み合わせて、価値を生み出し、外部へ発信していくといった動きになっているという。この時、どんなデータを組み合わせて、どのように配信していくかといったデータの流れ(データパイプライン)をうまく設計することが重要だとしている。
中村氏は「今後はデータが商品、売買の対象となる」と述べ、2019年にはすべての企業が外部データ(Twitter、交通情報、気象情報、販売予測データなど)を購入すると予測している。