2015年もさまざまなIT技術がビジネスに大きな影響を与えてきた。今後もますます、IT技術が規模を拡大していくことは誰もが感じていることではあるだろうが、10年後、20年後を想像すると、一体どのようなサービスや技術が世の中に浸透しているのか、予測することは難しい。また各企業のビジネスの本業が、このまま変わらず続いていくのかといったことを考えてみても、昨今の状況をみると必ずしもそうだとは言えなくなってきている。ハードウェアの会社がソフトウェアを売ったり、逆にソフトウェアの会社がハードウェアを売るなど、産業の垣根はあいまいになってきている。

IT専門調査会社であるIDC Japanは12月9日、今後3年間における世界と国内のIT市場の動向を特徴付ける技術や市場トレンド、企業の動きなどに関する予測と提言を、「IDC FutureScape」で発表した。

これまで同社では、「Japan IT Market 2015 Top 10 Predictions」として発表してきたが、今年から予測の仕方を変更したという。従来はITベンダーを対象として予測を行ってきたが、今後はITベンダー含め、エンドユーザーの意思決定者(CIOやCEOなど)も対象に、今後の予測・提言を行っていくという。

これからの近い将来、一体どのような変化が起こってくるのだろうか。

12の考慮すべき外部ドライバー

まず、技術軸あるいは産業軸でのIT企画において、考慮すべき外部ドライバーとして12の項目があげられた。内容は以下の通り。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション):DXによるビジネス変革の加速
  • Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス):相互接続、相互認知、インタラクティブ、直感的、インテリジェントで認知的なエコシステム
  • Talent Quest(人材発掘):次世代のビジネス/ITスキルへの高まる需要と供給の枯渇
  • Urban Corridors(大都市圏化):巨大都市化のインパクト増大
  • Cloud Life(クラウドライフ):実生活とデジタルアイデンティティの境界の喪失
  • 21st Century Battleground(21世紀のパワーバランス):サイバー世界でのパワー闘争
  • East-West(東西バランス):グローバル経済のパワーバランスシフト
  • David and Goliath(ダビデとゴリアテ、小さな者が大きなものを倒す):分散VSグリッドエネルギーモデル間の競争拡大
  • Connected Well-Being(コネクテッドな福祉):モバイル、センサー、ソーシャル技術の収束
  • Risky Business(ビジネスリスク):国際経済のボラティリティインパクト
  • Rising Tide(海面上昇):気候変動による社会的なインパクト
  • Shifting Gears(ギアチェンジ):IT生産性向上のペースダウン

この中でも、IT市場のキーとなる外部ドライバーとして、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス)」「Talent Quest(人材発掘)」「Cloud Life(クラウドライフ)」の4つがあげられた。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、2004年に当時スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が名付けた言葉で、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義している。IDCでは、「ビジネスにおけるDXの実験的取り組みが主流化し、シームレスでグローバルな到達能力を持った新しいビジネスモデルが成立する。DXが競争上の要件になり、事業運営、コミュニケーション、サービスのデジタル化に対する莫大な新規投資を呼び込む源になる」と予測している。

ITバイヤー、ITサプライヤーにとって、DXはどのような意味を持つのか

また、「Cy-Q(サイバー認知インテリジェンス)」に関しては、「認知機能が進化するにつれ、ロボティクス、IoT、人工知能(AI)、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、大容量データセットとの組み合わせによって、システムが人間のインテリジェンスを模倣し、それを上回ることが可能になる」としている。

「Talent Quest(人材発掘)」に関しては、「第3のプラットフォームに関するコンピテンシーを獲得する能力は、ビジネス需要のペースに追いつかない人材の供給能力、アクセスするにはあまりに特定の地域に人材が集中しすぎている地理的条件によって、多くの企業で制約が生じる」と述べられている。

最後に、「Cloud Life(クラウドライフ)」に関しては、「クラウドを通じて、あらゆる形式の個人データ(金融、仕事、健康、所在地、家族など)を利用できるようになり、人々が日常生活の一部として定期的にやり取りし、更新、共有、管理する、一つのデジタルエンティティとしての管理が一般化する。ビジネスシステムは、一人ひとりの個人的な習慣や好みに関する知識を利用して、エクスペリエンスをカスタマイズし、ほかの人々に代わる信頼性の高いアドバイザーとなる」としている。

それでは、以上の外部ドライバーをふまえた、同社のIT市場10大予測を一つずつ見ていきたい。