小さな頃からの親しみのある食べ物を手にすると、それだけで人はほっと心落ち着くものである。山形県民にとって、そんな安心感をもたらす"食べ慣れた味"の代表格とも言えるのが「ベタチョコ」だ。しかしこの商品名、他県民には聞き慣れないもの。一体、いったいどんな食べ物なのだろう?
チョコが貴重な時代にチョコを塗りたくる
ベタチョコとは、開いたコッペパンにバタークリームをサンドし、その上からチョコレートを塗ったリッチな菓子パンだ。誕生したのは、東京オリンピック開催年と同じ昭和39年(1964)。以来、地元の人々に50年近く愛されているご当地パンである。
生産元であるたいようパンによると、当時まだチョコレートは高価なものだったというが、「どうせならチョコの少ない時代にチョコを塗りたくった商品を作ろう」との発想から誕生したという。なんともユニークなエピソードではないか。しかも、当時の消費者が、貴重なチョコたっぷりのパンを口いっぱいに頬張った幸せを思うと、なんだか泣けてくるくらい!
季節限定のベタチョコも
もちろん、客を喜ばせようとする姿勢は今なお変わらない。その施策のひとつが、季節ごとに異なる味わいのベタチョコを販売していること。冬限定のホワイトチョコレート味、春限定のイチゴチョコ味、夏限定のレモン風味、秋限定のキャラメル味ともに、オリジナルとは異なる軽やかな色合い。オリジナルと合わせて購入して、食べ比べてみるのも楽しそうだ。
ちなみに、現在発売中の冬季限定ベタチョコに使われているバタークリームは、甘さ控えめのココアバター風味。パンを覆うホワイトチョコレートとも相性抜群だ。
と、ここで取材に対応してくれたたいようパンに、「山形県民にとってベタチョコってどんな存在ですか? 」との質問をぶつけてみたところ、「たいようパンの社名は知らなくてもベタチョコは知っている」と、これまたなんともお茶目な回答。ベタチョコのこともたいようパンのことも、ますます好きになってしまうではないか!
さて、そのたいようパンであるが、ファンにできたてのパンを食べてもらうべく直売所も運営している。2種のチーズを練りこんだ「チーズフォンデュフランス」(1.5斤550円)、栗の甘露煮、さつまいも、金時豆をぜいたくに練りこんだスイーツ感覚パン「和ごころ」(1.5斤550円)などの人気商品も販売しているので、近くを通りかかった際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。
※記事中の価格・情報は2015年12月取材時のもの。価格は税込