外回りも多いビジネスマン向けの3in1 PC「HP Elite x2 1012 G1」

日本HPは12月10日、法人向けとなる12型Windowsタブレット「HP Elite x2 1012 G1」を発表。2016年2月から順次発売する。製品の概要とスペックに関しては別記事『日本HP、2in1にもなる820gの12型Windowsタブレット「HP Elite x2 1012 G1」』を見ていただくとして、ここでは発表会の内容をお伝えする。

HP Elite x2 1012 G1とオプションのトラベルキーボード

電源にはUSB Type C(USB-PD)を採用。最高5V2A/12V3A/15V3Aの45W電源だ

スタイラスはワコム製を採用。2,048段階の入力が得られる

オプションのアドバンスド無線ドッキングステーション。Wi-Gig接続で使い勝手がよい

デスクトップ利用イメージ。タブレットのスタイラスのチェック用機材を兼ねているので画面は落書き

進行上、最後に急いでお披露目された新製品だが、説明を行った九嶋氏は「欲しい機能を全部入れた3in1」と紹介。普段はキーボードレスのタブレット、そして必要なときにキーボードを着けてクラムシェル風ノートPCという2in1 PCは、Intelが新しいスタイルの製品として提唱している。しかし、携帯性を重視すると物理的に広い画面が実現できない。

HPの提案は、オフィスではディスプレイ、キーボード、マウスを接続し、ネットワークも有線LANを使用する。Wi-Gigのドッキングステーション(オプション)を利用すればケーブル接続の必要もなく、フリーアクセス式スペースでも設置しやすいというものだ。

タブレットPCの利用シーンであると便利なスタイラスには、ワコムのアクティブES(静電結合)方式のペンを標準で付属。また、ノートPCとしての利用時には入力感にこだわったというトラベルキーボード(オプション)が取り付けられ、タブレット本体背面にキックスタンドを搭載することで、角度も自由に変更可能だ。

日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長 兼 サービス・ソリューション事業部長の九嶋俊一氏。手に持っているのは未発表のXEONノート

オプションのWi-Gigを使えばデスクトップ代わりにもなると「3in1」をアピール

長期利用で重要な耐久度のほか、ビジネスで使うための機能を多く盛り込んでいる

耐久性に関してはかなり入念なテストが行われている

内容的には、マイクロソフトのSurfaceとモロに被る製品となるが、差別点は、3in1スタイルを支えるWi-Gigドッキングステーション以外にも多い。例えば、以下のような内容だ。

  • 5万項目(11.5万時間)におよぶ過酷なテストを行っているタフさ
  • DocomoまたはKDDI(au)の相互接続試験の対応(販売開始までに完了する予定)
  • Windows Helloにも対応する指紋認証リーダー
  • 改ざんを防ぐ独自BIOS、
  • 物理的なセキュリティを確保するセキュリティスロット
  • Intel Core m使用によるファンレス設計
  • 製造終了後5年間の部品保持を保証する長期の修理体制
  • 日本のコールセンターによるサポート

個人的には、USB Type-Cによる給電(USB-PD対応)がうれしい。純正のアダプタ以外でも、今後の広がりに期待できる。

スピード感ある製品展開とイノベーション & 大企業ならではの水平展開

今回の発表会では、HP Inc.からリチャード・ベイリー氏が来日。ヒューレット・パッカード カンパニーの分社化によって、ベンチャー企業の創造性とスピード、フォーチュン100社の規模と体力を併せ持つ会社として生まれ変わり、今後も顧客の生産性を向上させる驚きを持たせるテクノロジーを提供するとコメントした。

新製品を持つHP Inc.アジアパシフィック&ジャパン プレジデントのリチャード・ベイリー氏(左)と、日本HP 代表取締役 社長執行役員の岡隆史氏(右)

新生HP Inc.は75年の歴史と強い企業体力を持ちながら、ベンチャー企業のようなスピード感でイノベーションを届けるという

日本HPの岡社長は、分社して扱う商品に対して、コンシューマーPC以外では世界No.1シェアを持ち、そのボリューム力を生かして製品の横展開が可能になると発言。一例として、前世代の「HP ElitePad 1000 G2」は標準的なモデル以外に、医療・介護業種向け、教育機関、土木建築用に特化した製品を投入していることを紹介した。

また、日本HPでは、日本の顧客に合った形へと、製品のスペックやサービス、サポートの調整を行っている。具体的には、サポート品質を上げるために日本コールセンターを開設したり、ビジネス製品を日本で製造する「Made in Tokyo」といった施策を挙げた。

HP Inc.の対象は、いわゆるコンピューターとプリンター。といってもサーバーもあれば、デジタル印刷機も含むという、かなり幅広い製品分野を持つ

単にHP製品を届けるだけでなく、日本の文化や要求に応える製品・品質と、サービスを提供

規模が小さいと開発費をペイできないが、グローバル規模ならば業界業種に合った専用機の水平展開が可能になる。HPのプリンターというと一番左側のイメージだが、印刷会社向けや垂れ幕の印刷をこなす製品まで含む。2015年9月の印刷業界向け展示会では、会場で最大規模の展示だった

採用事例も紹介。保険業界向けでは、セキュリティを上げるためにFeliCa社員証をPaSoRi(RC-S390)経由で認証し、本人と端末が離れると利用できなくなるカスタマイズを行った。また、水産加工現場で端末を使うために、もともとは介護用途向けだった頑丈かつ抗菌防水端末を利用。現場ですぐにデータを入力可能になった事例もある。

保険調査会社向けの事例では、高いセキュリティを維持することでタブレットの持ち出しが可能となり、社内のベテランと現場の新人とで共同作業を実現

東日本大震災で被害にあった水産加工会社では、本来は介護医療用のタブレットを利用。現場でのデータ入力に対応させ、人員7割で売上を維持したという

学校機関向けに関しては、HP製品を採用した滋賀学園高等学校の安居氏が登壇。21世紀型スキルを身に着けるためのテストケースとして、高校の一クラスで採用したが、今後の数年で全校生徒に広げたいとした。HP製品を利用した感想には、「教育専用に設計されたタブレットと教育支援ソフトが利用しやすかった」、「HPというグローバル企業に、生徒も含めて触れる機会が得られたことも利点」などを挙げていた。

滋賀学園中学・高等学校 校長の安居長敏氏

今後の方針は「知識を与える従来の教育から学び方の種をまく」

今年から特別クラスを高校一年生に設置

教員用2in1タブレットと生徒用タブレット(キーボードがドッキングする)を使用し、教師や生徒の画面がプロジェクターに表示される

「とりあえずやってみなはれ」的なコメントなのは私学ならではか

教育専用に設計されたタブレットや標準搭載の支援ソフトがよかったというほか、導入したタブレット本体の不良は出てないという。タフ度にも期待してよさそうだ

生徒用に導入されたのは「HP Pro Tabret 10 EE G1」。タブレットをキーボード付のベースにはめ込んでいるので、角度調整はできない