日本時間12月4日22時30分に発表された米11月雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比21.1万人増と予想(20.0万人増)を上回るとともに、前2カ月分が合計で3.5万人上方修正された。この結果、3カ月平均は再び20万人の大台を超えて21.8万人増となった。また、失業率(5.0%)は予想と一致したが、7年半ぶりの低水準を維持。そのほか、平均時給(前月比+0.2%、前年比+2.3%)も予想通りにまずまずの伸びを示した。米労働市場の基調的な改善が確認できる好内容であり、利上げを正当化する内容であったと言えるだろう。

米失業率と非農業部門雇用者数

米国平均時給

なお米FF金利先物は、12月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.25%利上げの可能性を8割程度織り込んだ水準で推移している。

米FF金利先物 12月利上げ(0.25%)織込み度合い

1カ月前の当コラムでは、12月4日に発表される米11月雇用統計が12月FOMCでの利上げに向けた「最終試験」になるとの見方を示したが、その「最終試験」は難なくクリアした格好で、12月16日には2006年6月以来9年半ぶりとなる利上げが実現する可能性が極めて高まったと見て差し支えないだろう。

ところが、今回の11月雇用統計発表後には、米長期金利が低下するなど利上げ観測の高まりにはそぐわない市場反応が一部に見られた。原油価格の下落などによる低インフレ環境の長期化が見込まれる中、米国の来年以降の利上げペースは、極めて緩やかなものになるとの見方が広がったようだ。また、雇用統計の好結果を受けて12月の利上げ開始が濃厚となった事で「出尽くし感」が広がった面もあったと見られる。いずれにしても、市場の焦点が「利上げ開始時期」から「利上げペース」に移った事を物語る長期金利の低下であった。

こうして米雇用統計は、実質的な利上げのGOサインとなると同時に利上げの是非を判定するという役割を終えたと考えられる。1月8日に発表される12月分の雇用統計からは、米国の利上げペースを測定するという新たな役割を担う事になるのだろう。具体的には、一段と雇用の改善が進めば利上げペースが速まるとの観測に繋がる一方、雇用の改善がもたつくようだと、利上げペースは緩やかになるとの見方を補強する材料になりやすい。想定しづらいが、もし雇用情勢が悪化すれば利上げ打ち止め観測が広がる可能性もある。

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya