東京都板橋区はこのほど、同区内の企業であるタニタと効率的・効果的なヘルスプロモーション活動を推進する事業「いたばし健康づくりプロジェクト」を開始させた。行政と産業界がタッグを組み、約55万人にものぼる区民を対象とした大規模な健康推進事業は行うことは、全国的にも珍しいと言える。その狙いは何なのか。板橋区 健康推進課の長谷川吉信管理係長に話を伺った。
「いたばし健康づくりプロジェクト」とは
同プロジェクトでは、「健康増進コース」「国保生活習慣病予防コース」「スポーツコース」の3つのコースを用意。参加者が自らの身体的特徴や運動習慣などを考慮し、好きなコースに参加できるように工夫した。
3つのコースのうち、「スポーツコース」だけが先行する形で2015年5月よりスタート。それに続いて、9月と10月に残りの2つのコースがそれぞれ開始された。いずれのコースも数カ月間に複数回実施されるプログラムを通じ、参加者に運動や栄養などについて学んでもらうという流れになっている。2015年度の後期における各コースの参加者は、「健康増進コース」が500人、「国保生活習慣病予防コース」が100人、「スポーツコース」が200人とのこと。
コースの内容はそれぞれ異なるが、「自らの体の状態を可視化し、把握してもらう」という根幹部分は共通している。そのために役立つのが、同プロジェクトの参加者に配布されるタニタの活動量計だ。
区内の体育施設や健康福祉センターなどの11カ所に設置された計測スポットで、ウオーキングなどの活動量や体重、体脂肪、筋肉量などが測定でき、そのデータを同社のwebサイト「からだカルテ」で管理することで、体の変化の様子を把握できる仕組みとなっている。
また、6月には同区内のハッピーロード大山商店街にタニタ監修のランチを提供する「大山SUKUSUKUカフェ&キッズ」もオープン。新鮮食材を用いたおいしくヘルシーなメニューで、「食事からの健康づくり」を意識してもらえるように工夫もしている。
区民に1万歩歩いてもらえる施策作り
ではなぜ、同プロジェクトを開始させるにいたったのか。長谷川管理係長によると、区長から昨夏に区民の健康づくりを支援するプロジェクトを立ち上げるよう、要請があったという。
「そこで『区内にあるタニタさんと連携するのがいいのではないか』という話になり、2014年11月にプロジェクトに関する協定を結びました。プロジェクトの内容としましては、区民の健康寿命の延伸を目指す『板橋区健康づくり21計画(第二次)』にのっとり、まずは区民に1万歩歩いてもらうことを啓発するようなものを目指しました」。
QOLを損なわないためには、自分の足で歩けることが重要。寝たきりに伴う要介護状態の回避や、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病リスクの低減にも、歩行はつながるからだ。
「区内の11カ所に設置された計測スポットにも、活動量計を持っている人のほかに、そのご家族やご友人なども一緒に来られているケースがあるようで、プロジェクトを通じていろいろな連帯感が生まれていると感じます」と長谷川管理係長。ウオーキングをもっと楽しんでもらえるよう、商店街の空きスペースを活用して、計測スペースを増設していく構想も既に練られているという。
歩く習慣づけへの意識は浸透しつつあり、区の健康福祉センターには体組成計などの計測に来る人が以前に比べて増えてきている。各コースで実施しているプログラムも好評なようで、参加者によるアンケートには「取り組んでよかった」「栄養セミナーを通じて、『こういう食材をとればいい』ということがわかった」などのコメントが見られているそうだ。
今後はさらなるコラボの可能性も
長谷川管理係長は、「日常で歩く歩数を伸ばし、プロジェクトをきっかけにして区民の健康寿命が延びてもらえれば」と話す。タニタと協定を締結しているため、現時点では他の企業との共同プロジェクトは考えていないそうだが、これからの事業展開次第では「検討の可能性はあります」とのこと。今後はどのようなプロジェクトが生まれるのか、板橋区の取り組みに注目したい。
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