日本通信は4日、「日本通信、ドコモ訴訟判決を受けて -訴訟継続を無意味にした総務省新方針-」と題する声明文を発表した。少々背景を知らないとわかりにくい面もあるため、かみ砕いて読み解いてみよう。

日本通信が発表した声明文の一部

ドコモとの訴訟の結果を受けて

日本通信は1996年からMVNO事業を行っている老舗で、現在は主にNTTドコモとの間でレイヤー2接続でのMVNO事業を行っているのは周知のとおりだ。しかし、ドコモ側から一方的な接続料の値上げを断行されたため、接続料算定式の合意の有無を巡って、2012年4月に東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起していた。

この訴訟の判決がようやく先日(11月27日)出されたのだが、接続料算定式の合意があったことは認められたものの、この合意はドコモ側の接続約款における規定により変更可能という判決だった。日本通信ではこれを受けて、控訴するかどうかの対応を協議していたが、その結果が今回の声明文ということになる。

MVNOを巡る環境の変化に期待

結論から言えば、控訴はされない。

今でこそMVNO事業者は非常に多くなっているが、日本通信が事業を始めたころはMVNOという言葉すらほとんど知られておらず、MVNO事業そのものも、総務省が推進する携帯電話事業のオープン化という方針を受けて、ガイドライン、すなわち電気通信事業法の解釈というかたちで運用されてきた事実がある。これだけ普及してきてはいるが、案外頼りない基盤の上にある制度だったといえる。

しかし、今年5月に公布された改正電気通信事業法や省令改正によって、MVNOが法的に認められた立場を持つことになる。また、日本通信との間で問題となっていた接続料算定式についても、接続約款の添付資料として、算出の根拠を説明した書類などと合わせて提出する義務が設けられることになった。これによってMVNO側が一方的に接続料を値上げされるといったことが起きなくなり、MVNO事業者の事業基盤の安定が図れることとなった。

さらに11月27日には、MVNO事業者が望んでいたHLR/HSS(ホームロケーションレジスター/ホームサブスクライバーサーバー:電話番号や契約内容と携帯電話の現在位置、通信経路などを管理するデータベース)の接続も開放される方針となり、MVNO事業者にとってはこれまで要求してきたことの多くが解決する流れとなっている。ここにおよび、日本通信も控訴の必要がなくなったと判断したわけだ。

MVNO事業者としては、HLR/HSS接続が可能になることで、独自の通話料金(定額制を含む)やローミングサービスを設定できることになる。これまでの「単に安い携帯回線」というだけの位置付けから、さらに高度なサービスが提供できることになり、特に技術力のある事業者にとっては大きく風向きが変わってきたと言える。日本通信としてはこうした背景も踏まえて、前述のような声明文を発表したのだろう。