2015年12月12日、沖縄にて、Nianticの拡張現実ゲーム「Ingress」の特別イベント「ABADDON」が開かれる。去る11月14日には台湾のNew Taipei CityでABADDONが開催されたが、プレス向けのグループインタビューでNiantic アジア統括部長の川島優志氏にお話をうかがった。なお、New Taipei City(台湾新北市)は、台北市を囲む形の衛星都市群。今回のイベントは、台北駅から地下鉄で4駅離れた板橋地区で行われた。

アフターパーティー会場となった台湾 新北市 市政府前広場

Ingressの旗を持つNiantic, Inc.アジア統括部長の川島優志氏

―― 台湾のエージェント(プレイヤーのことをIngressではエージェントと呼ぶ)に対して、どのような印象をお持ちでしょうか?

川島氏「世界的に見ても、台湾には有数のエージェントが多く存在します。台湾のエージェントは高い情熱を持ってプレイしていますね。去年(2014年)も台北でイベントを開き、1,000名程度の参加者がありました。今回のイベントでは数千人の参加者がありました(編注:後日5,000人を超えると発表された)」

―― 今回のイベントハイライトを教えてください。

インタビューに対応してくれた川島氏。記者に見せる画像を探している

川島氏「台湾のエージェントは非常にチームワークが良く、困難なミッションも協調して解決します。アジアでも屈指の良エージェントがそろっています。

Ingressではポータル間を結ぶリンクを交差することはできませんので、目的のリンクと交差するリンク結ぶためには、事前に邪魔なポータルを攻撃して無効化する必要があります。例えば、ベトナムから台北へとリンクを張るためには、台北にある数百万のポータルリンクをよける必要があるわけです。

今回は台湾の『レジスタンス』チームが海外のエージェントと協力し、ロシアとチベット、インドネシアを結んだ巨大なCF(*)を作成しました。台湾のエージェントには、このような困難な作業を成し遂げるチームワークがあります。

一方で『エンライテンド』チームも負けてはいません。このCFを構成するポータルを攻撃してCFを解除し、新たに台北を囲むCFを作成して対抗しました。今回は台湾で行われたイベントですが、台湾以外の国際的なエージェントの協力があり、台北を覆う巨大なCFが見られたのです」

(*)コントールフィールドの略。リンクで囲まれた三角形の陣地のようなもので、作戦エリアをCFで囲むのは重要。

【左】イベント開始早々、レジスタンスチームが仕掛けた「ロシア-チベット-インドネシア」を結ぶ超巨大フィールド。これを作ると、MUというポイントが手に入るが、1.14Bというものすごい数字が出たそうだ。【右】対抗してエンライテンドチームが仕掛けた巨大フィールド。こちらのほうが小さいものの、今回の作戦区域を覆っているので問題ない。画面下の起点からよくリンクが通せたなぁと驚いた

―― Ingressは「ジャーニー」がキーワードとなっています。今回は台北市ではなく、新北市での開催となりましたが、次の台湾開催は台北になるのでしょうか? それとも、ジャーニーにふさわしく台中や台南での開催になりますか?

川島氏「イベントの場所選びには色々な要素がありますが、ローカルプレイヤーがどのぐらいアクティブなのかが重要です。今回は新北市で開催になりまして、これには新北市政府の協力があります。

2015年末にミッションデーを開く予定ですが、これも地元自治体と地元エージェントのコラボレーションが重要です。来月(2015年12月)は沖縄でAbaddonが開催され、沖縄は中国や韓国とも近いところなので、よりオープンな関係が期待できるでしょう。

台湾は非常に魅力的な街ですから、次回のイベントがあるとすれば、エージェントの皆さんに台湾新幹線に乗ってもらって、別の場所で開催かもしれませんね。ただ、様々なプランがあるので、現段階ではまだ決定されておりません」

【左】当日午前中の参加地点。今回からアイテム詰め合わせパックが有償配布された。黒服のお姉さんが受け取ろうとしているのは、一番高いVery Rareパック。スタッフがチケットのQRコードをタブレットで読み取っている。【右】事前登録すると無料で入手できるVery Commonパックの列と、引き換え終わった人たち。スマートフォンに向かっているのは、メダルをゲーム画面に表示させるためにコードを入力している

―― それぞれの陣営に対してメッセージを

たむろしてスマートフォンで遊んでいるように見えるが、左のレジスタンスチームと、右のエンライテンドチームのバトル中。レジスタンスチームは、おおむね青いグッズを身に着け、エンライテンドチームは同じく緑グッズを身に着ける

川島氏「レジスタンスチームは今回、アジアに巨大なフィールドを構築しました。これらは台湾のチームだけでなく、国際的な協力によって不可能を成し遂げており、世界の人を驚かせたと思います。

エンライテンドチームは、これに対して諦めませんでした。協力してレジスタンスのCFを破壊し、台湾をエンライテンドのフィールドで覆い直しました。諦めない精神がなければできなかったと思います」(編注:台北Abaddonはエンライテンド側の勝利となったが、インタビュー時点では未発表)

余談だが、Ingressのイベントには地元自治体との協力関係も大切だ。Ingressは「実際に現地へ行かなければならない」という集客性を持っているので、自治体からは比較的好意的に見られていると思う。

2015年3月に京都で行われたイベント「XM Anomaly:Shonin」のアフターパーティーにて、スピーチする京都市長の門川大作氏。「普段は青い和服ですが今日は緑」、「京都は戦乱の歴史」などと、Ingressを理解している発言も

こちらは、2015年6月に仙台で行われたイベント「XM Anomaly:PERSEPOLIS」のアフターパーティー。スピーチするのは、伊達正宗コスプレで登場した仙台市副市長の伊藤敬幹氏。横に控えているのは、ご当地ゆるキャラの「むすび丸」(左)と「ざおうさま」(右)