IDC Japanは「2015年 国内企業のマーケティング活動とIT利用実態調査」を11月5日に発表した。企業のマーケティングに対する考え方や活動はどのように変化しているのか、国内558社を対象にしたこの調査を担当したアナリストである、IDC Japan ソフトウェア&セキュリティマーケットアナリスト もたい洋子氏に聞いた。
日本のIT市場は、すでに飽和状態にあり、どの分野でも大きな伸びは望めないともいえる状態だ。その中でわずかながら伸びているのがソフトウェア市場であり、さらにその中で大きく伸びているのがマーケティングソフトウェアだという。
「企業の利用するソフトウェアというとERPなどいろいろなものを含みます。そのため、右肩上がりというほどではありませんが、2~3%程度は伸びると考えています。ただ、こういったものはすでに定期的な刷新はあるものの、爆発的に伸びるというものではありません。それに対してマーケティングソフトウェアはこれから本格的に入って行くもので、今後大きな伸びがあると考えました」と、もたい氏は語る。
調査結果発表時に公開された概要では、今後2019年までにおけるマーケティングソフトウェア市場の年間平均成長率は10.5%とされている。同時期のアプリケーションソフトウェア市場全体の年間平均成長率が3.1%であることと比べて非常に高い数値だ。
「マーケティング分野はこれまで、CMO(Chief Marketing Officer)のような全体を牽引する役割の方がおらず、部門ごとの予算をやりくりして、マーケティングやそのシステムというものが進んできました。しかしデータ分析の需要もありますし、今後パーソナルデータを活用するということになれば管理システムも必要です。全社で大きなお金を使ってまとめていかなければならないということもあるため、そういう部分での成長もあると見込んでいます」と、もたい氏は説明した。
CIO/CDOの激増と全社横断組織設置済企業の多さに感じる意欲
企業の取り組みは、まず基本的な外枠を作るところから着手している状態のようだ。もたい氏が昨年から行った調査の中で、CMOおよびCDO(Chief Data Officer)が社内に存在すると回答した企業はいずれも3割程度あったという。
「こんなにCMOが存在するのかと驚きました。ただし私見ですが、CMOは営業本部長兼務、CDOはCIO(Chief Information Officer)の兼務、というような状態ではないかとも思います。場合によっては、社長兼務ということもあるでしょう。結果を出すための役職というよりは、まず形として選任したという形です。しかし、数年前まで日本にはCMOがほとんどいなかったことを考えると大きな進歩です(もたい氏)
同じく企業の多くが保有していることに驚いたというのが、データ分析を行うための全社横断的な組織だ。
「相当数の企業が横断的な組織を持っていました。こちらもまだ何をしているというわけではなさそうですが、縦割りからは変えていかなくてはならないという意識が出てきたのでしょう」と指摘。
従来の日本企業におけるマーケティング活動は、部署ごとに独立した活動であることが多かった。部門ごとに予算の中でマーケティング活動を行い、それぞれが分析するという形だ。営業部門が販売推進目的で行うものが多く、全社的にデータ活用を行うことはできていなかった。
「部門ごとに小さく進んできたものが、横断的に対応していかなければならないという流れができてきています」と、企業の意識変化をもたい氏は語った。