日本初のスマートフォン向け放送「NOTTV」が2016年6月末にサービスを終了する。NTTドコモ、同社のグループ会社で運営元のmmbiが27日に発表した。サービス開始からわずか3年余りでの終了宣言。なぜこれほどまでに短命となったのか。
NOTTVは2012年4月にスタートした有料のスマホ向け放送サービス。対応端末、視聴エリアを拡大しながら、徐々に契約者数を伸ばし、ピークには175万人の契約者を抱えていた(2015年3月末)。だが、27日に発表されたのは、いきなりのサービス終了宣言だった。
サービス終了について、mmbiは「インターネットによる映像配信の普及等により、当初想定していた会員数の獲得にいたらなかった」ことを理由に挙げている。
映像配信サービスは今年に入って競争が激化した分野だ。黒船と呼ばれた「Netflix」が今年上陸し、Amazonはプライム会員向けにAmazonプライム・ビデオを提供した。古くからは人気のYouTubeがあり、mmbiの親会社、ドコモも自身もdビデオなどの映像配信サービスを展開している。
足元の契約者数はどうか。公表されている最新の数値で154万人(2015年9月末)と、まだまだ、かなりの契約者を抱えていることがわかる。しかし、NTTドコモ広報部によると、その実態は「赤字」という。現時点でも赤字であり、外部環境の変化により、契約者の増加が見込めないサービスを終了せざるを得なくなったわけだ。
ただし、これだけで短命になったことは説明しきれない。実は、開局当時からいくつかの課題を抱えていた。それは対応端末と視聴エリアだ。
スタート時は「AQUOS PHONE SH-06D」「MEDIAS TAB N-06D」のわずか2モデルのみが対応、視聴エリアも日本全国の一斉開局とはならず、順次拡大していく戦略をとった。その影響は契約者数にも出ている。NOTTVが10万契約を突破したのは、サービス開始後4カ月後のこと。対して、dビデオはサービス開始後5カ月で100万契約を突破している。スタートダッシュでの失敗は大きなダメージだっただろう。
そして、最大の誤算はiPhoneが非対応だったことだ。現状はテレビチューナーなど外部機器と接続すれば視聴も可能だが、そこまでしなければ見ることができない。手軽に見られる対応端末が増えなければ、契約者の増加も見込めない。そして、人気端末のiPhoneをドコモが取扱いを開始したのは、NOTTVがすでに開局していた2013年9月のことである。皮肉にもドコモのiPhone取扱いもNOTTVを短命にした大きな要因といえるのではないだろうか。