既報の通り、PFUはドキュメントスキャナ「ScanSnap」の新サービス発表会を開催した。「ScanSnap Cloud」と呼ばれ、スキャンしたデータの種類を自動的に判別し、ユーザーが選択したクラウドサービスに自動保存するというもの。
新サービスに対応するScanSnapは、据え置きデスクトップタイプの「iX500」と、モバイルタイプの「iX100」だ。既存のユーザーも、iX500またはiX100のファームウェア更新によって、ScanSnap Cloud対応となる。ScanSnap Cloudの利用は無料だ。
スキャンしたドキュメントは、文書、写真、名刺、レシートの4種類に自動分類され、ユーザーがあらかじめ指定していたクラウドサービスへと自動転送。今までであれば、スキャンしたデータの種類をユーザーが判別、分類したり、ファイル名を付け直したり、特定のクラウドサービスへ手動でアップロードしたりという手間があったが、それらが不要に。ScanSnap本体のワンボタンで処理が行えるようになった。ScanSnapにとっては、世代が変わるほどの進化を成し遂げたことになる。
そのコンセプトとは?
まずは、PFU 代表取締役社長 長谷川氏から。「今まで我々は様々なスキャナを提供してきましたが、今回はサービスです。私たちを取り巻くICT環境が今、大きく変わっています。トレンドとしては、スマートデバイス、IoT、クラウド、ビッグデータなどのキーワードが注目を集めています。こうした環境のもと、新しい製品やサービスが、続々と生まれています。
特に、様々なものがインターネットに接続され、情報を交換することによって、相互に制御しあうという仕組み、つまりIoTの広がりが顕著です。家電製品などもインターネットにつながるようになってきています。このIoTの仕組みを活用して、クラウドサービスの充実によって、ワークスタイルやライフスタイルの変化が始まっています。
クラウドサービスというものは、仕事でもプライベートでも、使われることが当たり前という状況になってきています。ストレージや名刺管理サービスなど、新たなビジネス支援ツールとしても地位を確立しています。
そしてもう1つ、急激に広がりを見せているファイナンシャルテクノロジー『Fintech市場』。クラウド側が提供する会計や資産管理などのサービスが誕生し、注目度は急上昇しています。この分野でも、レシートや請求書などの管理に、スキャナが積極的に活用されています。
クラウドサービスの普及にともなって、私たちPFUは本日、紙とクラウドサービスをつなぎ、情報交換するドキュメントIoTを提唱いたします。ScanSnapは新たなステージに進化します」(長谷川氏)。
ここでいったんスピーチを止め、長谷川氏はステージ上に並んだスキャナのなかで、一番左の古いScanSnapに近づく。
「たいへん古い機種です。2001年、我々はUSB接続のScanSnapを投入しました。コンセプトはボタン一発PDF。ボタンを押すだけで紙がPDFに変わるというものでした。しかし、動かすには時間と手間がかかりました。我々が悩まされたのがUSBケーブルです。この悩みは10年以上続きました。ケーブルでつなぐということで、まず置き場所が制限されてしまいます」(長谷川氏)。
続いて中央のScanSnapへ。「2012年、USBケーブルの問題を解決するために、パソコンやスマートデバイスとScanSnapの接続にWi-Fiを採用しました。これによって、使い勝手、利用シーンを飛躍的に進化させました」(長谷川氏)。
最後は一番右のScanSnapだ。「しかし、スマートデバイスでもユーザーが何らかの操作をしないと処理ができず、誰でも簡単に使えるというものではありませんでした。そんな操作が必要なく、ボタンを1つ押すだけでスキャンしたデータをクラウドに送れたら、どんなに便利なことか。ワンプッシュするだけで、レシート、名刺、書類、写真を自動認識して、最適なサービスと連携する。もう、パソコンもスマートデバイスもいらない。それがScanSnap Cloudです」(長谷川氏)。
機能紹介
PFUのイメージビジネスグループ 国内営業統括部長 松本秀樹氏は、ScanSnap Cloudの仕組みや機能を説明。
「従来のScanSnapでは5つのステップが必要であったものが、ScanSnapCloudならワンボタンで済む。このとき、ファイル種類の判別、ファイル名の生成、イメージの最適化などが自動的に処理される」とした。
振り分けの種別は、レシート、名刺、文書、写真という4種類。どのタイプのデータに、どのクラウドサービスを割り当てるかは、初期設定でユーザーが指定する(変更可能)。あとは、ScanSnapで原稿を読み取るだけで、レシートを保存したいクラウドサービス、名刺や文書を保存したいクラウドサービスへと、スキャンデータが自動的に送信されるというわけだ。こうした設定に対応するOSは、現在のところWindows、Mac、Android、iOSと、一通りをカバー。
ScanSnap Cloudは、ScanSnapからアップロードされるデータを、いったんPFUのサーバで受け取る。そこで様々な処理をして、各クラウドサービスへと割り振る仕組みだ。不安なのはセキュリティだが、マイクロソフトのAzureをシステムの基盤とすることによって、暗号化など高度なセキュリティを実現しているとのこと。
ここで、ステージ上は日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏にスイッチ。Azureについて基本的なことが紹介されたが、ここでは省略する。
再びマイクはPFUの松本氏に戻り、過去から現在までのScanSnapとクラウドの連携が紹介された。そして、今回のScanSnap Cloudでは「11」のクラウドサービスと連携することを発表(将来的には増えていくそうだ)。
パートナー各社
ScanSnap Cloudのパートナーとなる企業から9社の代表が壇上にあがり、それぞれのサービスの特徴を紹介したが、ご存じのサービスも多いと思うので、ここでは触れない。パートナーの9社は以下だ。また、発表時点での対応クラウドサービス(11サービス)は、会計・個人資産管理の「Dr.Wallet」「クラウド会計ソフト freee」「MFクラウド会計・確定申告」「STREAMED」「弥生会計」、名刺管理の「Eight」、ドキュメント管理の「Dropbox」「Evernote」「Google Drive」「OneDrive」、写真管理の「Google Photos」となる。