子どもの体の成長に「成長ホルモン」が欠かすことができないのは周知の事実だ。ただ、成長期を終えた大人にとっては、もはやその存在はあまり意味がないと考えてはいないだろうか。実は成人してからでも、成長ホルモンは私たちの体において重要な役割を果たしているのだ。
そこで今回、ホルモンに詳しいAACクリニック銀座の院長・浜中聡子医師に、大人における成長ホルモンの重要性に関してうかがった。
傷ついた細胞を修復する
浜中医師はまず、成長ホルモンが大人にとって重要な理由として「傷ついた細胞の修復・再生」をあげた。
「運動や労働で筋組織が疲労困憊(こんぱい)したり、ケガで細胞組織が破損したりした際、それらを回復・修復させるためにも成長ホルモンが必要となります。皆さんも寝ると疲れがとれると思いますが、それは体組織を修復してくれる成長ホルモンが寝ている間に作用しているからです。体のメンテナンスをするために睡眠はとても大事ということですね」。
直接的な傷の修復・再生だけではなく、例えば、肌のターンオーバーも「組織の再生・修復」という観点で見れば、成長ホルモンの影響を多分に受けていることになる。「睡眠をしっかりとると肌の新陳代謝もよくなりますし、血流もよくなって老廃物が取り除けます」。この点を鑑みると、美容面においても成長ホルモンは重要であることがうかがえる。
免疫力維持や脂肪分解の効果も
次に、成長ホルモンには「病気への抵抗性・免疫力を維持する」という働きもある。仕事が忙しかったり、ついつい夜更かししたりして寝不足が続いた後、風邪をひいてしまったという経験を持つ人も少なくないだろう。この現象も、睡眠不足によって成長ホルモンの分泌量が低下したことに起因している部分が大きいと言える。
そして、成長ホルモンには"ダイエット効果"もあると浜中医師は解説する。
「よく『睡眠不足は太る』などと言われますが、成長ホルモンは睡眠中に体の脂肪をエネルギー源として消費・分解してくれます。成長期の子どもがご飯をたくさん食べてもなかなか太らないのは、成長ホルモンの分泌量がすごいからなのです」。
まずはしっかりと運動を
成長ホルモンの分泌量は20歳前後を境に少なくなり、30~40代で急激に減少してしまう。そのルールには抗えないが、多少なりとも減少のスピードを遅めることは可能。浜中医師は成長ホルモンの減少を緩やかにするには、「運動習慣を持つことが大切」だと話す。
美容に健康、さらにはダイエットと、さまざまな面で大人も成長ホルモンの恩恵を受けられる。その神秘的なパワーを少しでも多く得られるよう、今日から努めてみてはいかがだろうか。
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記事監修: 浜中聡子(はまなか さとこ)
医学博士。北里大学医学部卒業。AACクリニック銀座院長。米国抗加齢医学会専門医、国際アンチエイジング医学会専門医などの資格を多数取得。アンチエイジングと精神神経学の専門家で、常に丁寧な診察で患者に接する。