決済サービスを提供する米Squareは11月23日(現地時間)、Apple Payなど非接触通信の決済に対応した新型リーダー装置を全米100の店舗に先行提供したと発表した。新型リーダー装置はNFC対応のほか、チップ型のEMV対応カードの読み取りが可能。現在49ドルで予約受付を行っており、準備ができしだい順次発送されると思われる。
米国では今年2015年10月より「Liability Shift (ライアビリティ・シフト)」が施行されており、小売店でのEMV対応が事実上義務化されている。EMV (EuroPay, MasterCard, Visa)とは、カードブランド各社が共通で策定したカード仕様で、クレジットカードにICチップを搭載し、カード番号を第三者に悪用されないよう秘匿することで従来の磁気カードでは難しい高いセキュリティを実現している。ライアビリティ・シフトとは、カード情報漏洩等で損害が発生した場合、これまでカードイシュア(カード発行者、米国では主に銀行)がその責任を負っていたものが、ライアビリティ・シフト施行後はEMVを導入していない小売店に対して責任を委譲する(シフト)ようになる。つまり、小売店側では損害を被らないためにも、カード処理を従来の磁気カード方式のものからEMV導入へと舵を切る必要があるということだ。
一方で関係者らの話によれば、2015年末時点でもEMV導入で100%に近付くのは難しく、完全な浸透には数年かかるともいわれている。特に難しいといわれているのが中小や個人経営の小売で、主にSquareがターゲットとしている顧客層にあたる。同社ではiPhoneやiPadのイヤフォンジャックに挿入する磁気カードリーダーや、iPad一体型のスタンド形式のPOS装置を販売しているが、このライアビリティ・シフトに対応すべくEMVのチップ付きカードの読み取りに対応したリーダー装置を今年から提供開始しており、今回提供が開始されたNFC+EMVリーダー装置はその対応第2弾となるものだ。本体上面にiPhoneをかざせばApple Payが利用でき、EMV対応のチップ付きカードを装置横に挿入すればPINコードを組み合わせての支払いが可能になる。
リーダー装置自体は今年6月のWWDCで発表されたもので、1カ月ほどWWDC会場となったMoscone Center最寄りのBlue Bottle Coffee店舗でテスト運用が行われていた。その後、1カ月サイクルで別のBlue Bottle店舗に移管する形でテストが継続され、10月末日に最後のテスト店舗に訪問した際にはすでに装置は撤去され、「間もなく正式提供が開始される」と予告されていた。
プレスリリースによれば、最初の100店舗にはシカゴのHoney Butter Fried Chicken、サンフランシスコのPhilz Coffee、セントルイスのSump Coffee、ニューヨークのCafe Grumpyなどが含まれており、主に都市部の小規模店舗を中心に先行展開されているようだ。現時点で米国以外の展開については説明されていないものの、Squareが進出しているカナダや英国ではすでにApple Payがサービスインしており、そう間を置かずに新型リーダー装置の提供も開始されるとみられる。