普段の食事が身体にさまざまな影響を及ぼしていることは周知の事実だ。ただ、「偏った栄養バランスの食事が記憶にも悪影響を与えている」と知ったら、どのように感じるだろうか。オーストラリアの研究チームがそのような考えを示唆する論文を明らかにし、話題となっている。
さまざまな研究を取り扱うオンライン誌「BMC Medicine」にこのほど、食事スタイルと脳の変化に関する論文「Western diet is associated with a smaller hippocampus: a longitudinal investigation」が掲載された。
近年に入り、「食事の質」は認知症やうつ病などと関連があることが明らかになってきている。そのため、研究チームは食事の質と記憶をつかさどるといわれている脳の「海馬」との関係性を調べるための試験を行った。
試験は、60歳から64歳の225人が参加しているコホート研究をベースに行われた。参加者に食事摂取頻度などに関する質問項目に回答してもらい、約4年ごとにMRI検査を実施することで、食事パターンと海馬量の関係や、食事と海馬の萎縮スピードの関連性などを調べた。
その結果、健康的できちんとした食事は左の海馬量の増加につながるのに対し、「西洋式食事」(Western diet)を高い頻度で食べていると、左の海馬量が減少することがわかったという。この結果は年齢や性別、身体活動、喫煙歴、血圧などに関係なかったとのこと。なお、右の海馬量との関係性は確認できなかったとされている。
同試験によって、「高栄養価食事の低頻度摂取」および「低栄養価食事の高頻度摂取」はどちらも左の海馬量の減少につながることが明らかになった。研究チームは、「私たちの知る限りでは、これは過去に動物モデルで観察された『食事と海馬量には関係がある』というデータと合致した初めてのヒト試験だ」としている。
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