シマンテックは25日、インターネットの活用とサイバー犯罪の最新動向を世界規模で調査した「ノートン サイバーセキュリティ インサイト レポート」の説明会を行った。
説明会ではシマンテック ノートン事業統括本部 プロダクトマーケティング部の古谷尋シニアマネージャーが登壇。調査結果を解説した。
レポートは、調査対象の17カ国(インド、ブラジル、UAE、メキシコ、中国、米国、イタリア、フランス、カナダ、シンガポール、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、スウェーデン、ドイツ、オランダ、日本)から、各約1,000名の18歳以上のモバイルデバイスユーザーを対象としたオンライン調査結果(17カ国で計17,125名)に、各国のインターネット人口の割合に合わせ調整している。調査期間は2015年8月25日~9月15日。
日本はネット犯罪的に言うと調査国の中で最も安全な国だという。過去一年の被害率は7%と17カ国中最も低く、「過去を含め、今までネット犯罪に遭ったことがあるか」という質問でも14%と、世界平均の47%と比べると圧倒的に低い。また、日本の平均被害金額は18億9,657万3,600ドルと、17カ国全体の平均被害額より低い結果となった。とは言うものの、過去1年以内のネット犯罪被害者は800万人弱にも上る。
大文字・小文字・数字・記号を組み合わせた「安全なパスワード」の利用率は17%と、世界平均38%の半分以下となった。また、自分自身や周りのセキュリティ知識に対して評価する項目では、特に自分自身への評価が低く、他の国がすべてA以上だったのに対し、日本だけがC+となっている。
調査範囲の中では日本が最もネット犯罪の少ない地域で、。逆に言うと今後ネット犯罪が増えてもおかしくない |
過去を含めてネット犯罪にあったと回答した日本人は14%。これも世界平均を大きく下回る |
ネット犯罪率が低いことに加えて、意外なことに被害総額も低いのが日本。逆に被害率も被害額も高いのが中国となっている |
日本は平均被害額も3万未満と低い。逆に言うと本気で日本が狙われた場合、被害額はこれでは済まないということだ |
それでも一年間にネット犯罪の被害にあった人は日本で800万人弱いる |
一方、安全なパスワードを使っている率は17%と世界の半分以下 |
今後新たなオンラインの脅威に追いつけないと感じる人は、国内では全体の48%と半数近くに上る(世界平均は61%)。また、ネット犯罪に遭った場合、「精神的に大きなダメージを受けるだろう」とした人は国内で73%と高い結果に。実際に経済的損失がなくても、クレジットカード情報など、財務情報の盗難が精神的打撃を受けると考える人は、世界平均で81%と世界的にも多かった。
また、ユーザーはネット上にリスクがある事を感じ取っており、自分に起きる可能性がより高いと思うものを尋ねた質問で、「クレジットカード情報の盗難の可能性がある」のは、「財布から」よりも、「オンラインショッピング後」と回答したユーザーが多かった。さらに、日本では、実際にネット犯罪にあった人は、修理や損失アイテムの復旧など、その対応に世界平均の21時間よりも多い、29時間を費やすことが示された。
ネット犯罪遭遇率は低いものの、今後を考えると新しい脅威に追いつけないと考える人は約半数 |
経済的損失がなくても、財務情報の盗難が精神的打撃を受けると考える人は世界的にも多い |
犯罪者に対して怒るよりも盗まれたと落ち込む率が高い |
日本で実社会でカード情報が盗まれることは想定していないが、ネットでカード情報が盗まれると考えている率が高いと感じている |
ネット犯罪の被害は時間的損失が多い。日本は世界平均よりも多く丸一日以上の対処が必要になったという |
説明からわかるように、日本はまだ安全な国と言える。これは日本のサイバー犯罪者がまだ少ないことに加えて、日本語の壁で海外の犯罪者が参入しにくいことを意味する。ただし、ここ1~2年のオンラインバンキングを狙う攻撃では日本語が巧妙になっており、日本語の壁は破られつつあるだろう。
調査結果を見る限り、個人個人のネットリテラシーやセキュリティの知識を高め、パスワードを強固なものに見直し、適切なツールを併用することでネット犯罪の被害に遭遇する可能性を下げることは可能といえそうだ。まずはパスワードの見直しから行うのがよいだろう。