同時多発テロのあったフランスのパリにて11月30日に開幕するCOP21(国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向けて、18日、フランスのティエリー・ダナ駐日大使が日本記者クラブで会見を開きました。
「フランスは国境での検問を復活」
ダナ大使は、
「COP21は予定通りに開催される。パリ市内での開催ではなく、ル・ブルジェの特設会場が使用されるため、パリ市内よりも安全な場所だ。
今回のテロはパリで起きたが、準備はベルギーで行われた。過去においてはロンドンやコペンハーゲンでもテロが発生した他、マドリードも標的になっていた。国際社会では多くの国が標的となり、民主主義国家が狙いであることを忘れてはならない。そのため、EU(欧州連合)においても全体として安心安全と言うことはできず、フランスは国境での検問を復活させた。EU全体で協力を強化していく体制に合意している」
と、治安を強化している現状について説明しました。
「"環境問題"は、本当の意味での国際協力が必要」
その上で開催されるCOP21について、ダナ大使は、
「世界中に暴力やファナチズムが蔓延するなかで、"環境問題"は、政治、宗教などを超えて一つの目標に向かって各国が協力し合えるテーマだ。本当の意味での国際協力が必要となってくる。人間によって環境破壊が生じていることを誰もが否定できないし、この問題を解決すべきだと誰もが納得しているはずだ。今後は、世界全体の気温上昇を2℃以内にしなければ、自然災害につながることも皆が理解している。温暖化ガスの排出削減と気温の上昇を食い止めるためには、どの国も責任を取らなければならない。
COP21は、117カ国から国家の代表が出席する予定であり、今後の方向付けをする国際会議として、後戻りできないようなものにしたい。国によって努力の差も出てしまうが、その点については資金を集めることで対処していきたい。例えば、先進国においては温暖化ガス削減の数値目標に向けての資金も準備しやすいが、新興国、途上国においては資金が不足している。対処するための資金としては2020年までに1000億ドルを集める予定だ。OECD(経済協力開発機構)の統計によれば10月1日時点ですでに620億ドルの資金が集まっており、EUではイギリス・フランス・ドイツの3カ国が新たに150億ドルを拠出することがわかっており、計770億ドルと試算されている。今後はアメリカなどの先進国からの拠出金にも注目したい」
と述べました。
「日本の皆さんが愛してやまないフランスは、今もまだそこにある」
また日本との関係についてダナ大使は、
「今回のテロ事件に関して、日本各地から寄せられた哀悼や連帯感の表明に深く感謝している。
軍事行動が展開されている中東は日本から離れているが、フランスと日本は対テロで協力している。今後はサイバー犯罪、マネーロンダリングなどの面において、緊密に情報交換し、全般的なテロとの戦いで協力関係を築いていきたい。
IS(イスラム国)によって、今年1月に犠牲になった日本人もいる。テロ活動を根絶するために協力していくことが重要だ。
また、フランスはリスクの高い地域になってしまったため、日本からの観光客が旅行を取りやめてしまうのは仕方のないことだが、一時的なものであることを望んでいる。
日本の皆さんが愛してやまないフランスは、今もまだそこにある。レストランのテラス席で犠牲になった人たちもいたが、パリでは今、『皆でレストランへ行こう』という呼びかけのもとに行動を起こし、各店のテラス席は満杯になっている。フランス人の"文化や生活を楽しむ生き方"は一切変わっていない。日本の皆さんがまたフランスを訪れてくれることが、フランスにとっても強みになる」
と、強調しました。
執筆者プロフィール : 鈴木 ともみ(すずき ともみ)
経済キャスター・ファィナンシャルプランナー・DC(確定拠出年金)プランナー。著書『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。東証アローズからの株式実況中継番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重テレビ・ストックボイス)キャスター。中央大学経済学部国際経済学科を卒業後、現・ラジオNIKKEIに入社。経済番組ディレクター(民間放送連盟賞受賞番組を担当)、記者を務めた他、映画情報番組のディレクター、パーソナリティを担当、その後経済キャスターとして独立。企業経営者、マーケット関係者、ハリウッドスターを始め映画俳優、監督などへの取材は2,000人を超える。現在、テレビやラジオへの出演、雑誌やWebサイトでの連載執筆の他、大学や日本FP協会認定講座にてゲストスピーカー・講師を務める。