「第4回鉄道技術展」が11月11~13日、幕張メッセで開催された。2010年から始まり、2011年以降は隔年開催となって、今回が4回目。このイベントを「鉄ちゃんの祭典」と形容した人がいたと聞いたが、個人的には疑問に感じた。むしろこれは「業界関係者向けの実務イベント」というべきものである。実際、会場では各鉄道事業者の関係者が多く目についた。
では、鉄道業界関係者は何を求めてこのイベントを訪れるのか? それに対して、出展者は何をアピールしているのだろうか?
こうしたイベントがあると、目立ち、かつ報道されやすいのは車両がらみの展示である。たとえば今回の場合、三菱重工が持ち込んでいたニューシャトル(埼玉新都市交通伊奈線)新型車両2020系や、総合車両製作所(J-TREC)の「sustina」関連の展示がそれだ。しかし、面積からいっても数からいっても、主役は別のところにある。
鉄道技術展は「鉄道を動かすためのしくみ・システム」を知る場に
昔のように、鉄道が陸上輸送の王者だった時代ではない。自動車とも航空とも海運とも激しい競争を展開している。需要は青天井ではないし、景気の動向、あるいは少子高齢化による通学需要の減少など、鉄道事業を取り巻く環境は決して良いものではない。
その一方で、「公共性」という錦の御旗の下、鉄道事業を維持していくよう求められる場面は少なくない。最近だと、JR北海道が「利用が少ない路線や列車の廃止・減便」を表明したのに対し、マスコミや自治体が反発している事例がある。
そうした中で、鉄道事業を維持していくにはどうするか? まずは、鉄道を魅力的な輸送手段にしていかなければならない。それも、できるだけ少ない経費で実現したい。「公共性」ばかり振りかざしていると忘れられがちだが、民間企業であれ公営であれ、経営状態が良いに越したことはないのである。
だから鉄道事業者は、安全・安定輸送をいかにして実現するか、その際にどうやってコストを抑えていくか、ということを考えている。それに応えるためのソリューションを得る場として、鉄道技術展というイベントがある。
だから、ここでは「鉄道を動かすためのしくみ・システム」が主眼になる。利用者の目につきやすいのは車両や駅施設だが、その裏側でどんなしかけが、どんな仕事があるのかを知ることができる。業界関係者向けだから、そういう話になる。
線路保守 - 海外の著名なメーカーもそろって出展
交通機関はすべてそうだが、快適性を高める努力は不可欠である。すると、動揺や振動が少ないとか、静粛性に優れるとかいった話も、当然ながら出てくる。それは車両だけが頑張っても実現できない話で、線路の状態を良くする必要がある。
ところが、保線作業は夜間の屋外作業が多いから、人手の確保が難しい。省力化と効率化と仕上がり品質の確保を両立させるには、高性能の保線機械が不可欠だ。だからこそ、鉄道技術展では海外の「保線機械御三家」(と筆者が勝手に呼んでいる)がそろって出展しているのだ。
それが、マチサ(スイス)、プラッサー&トイラー(オーストリア)、スペノ・インターナショナル(スイス)である。マチサやプラッサー&トイラーは、バラストの突き固めと軌道の狂い整正を行う「マルチプルタイタンパー」のメーカーとして著名だが、それ以外の保守機械もいろいろ手がけている。
さすがに鉄道技術展の会場に保守用車の現物は持ち込めず、資料や模型による展示が主体となるのは致し方ない。そこで、手元にストックしてあったプラッサー&トイラーの保守用車の写真、それと同社が出展していたレール溶接機を紹介しよう。いずれも乗り心地が良く、騒音の少ない軌道を造るために役立つ機械だ。
スペノ・インターナショナルは、過去に本誌レポート記事でも紹介したレール削正車のメーカーだ。同社は、これまで日本では行っていなかった分岐器の削正に関するデモンストレーションの成果を披露していた。分岐器は構造が複雑なので、削正車で削るのは難しいとされていた。それが可能になれば、作業の効率化とレールの長寿命化を期待できる。
JRグループで軌道設備の検測や保守を担当している会社の出展もあった。自ら機械を製作して売り出したり、コンサルティング業務を行ったりしているので、業界に対して広くアピールする意味がある。