避妊しないSEXのリスクを知ろう

避妊しないセックス、"思いがけない妊娠"以外のリスクを知っていますか?

不妊や夫婦間のセックスレスが問題になる一方で、若い世代では、避妊しない無防備なセックスをしている人が多いと言われています。

最近は授かり婚に肯定的な風潮もあることから、「妊娠したら結婚すればいい」と軽く考えているカップルも多いかもしれませんが、避妊しないセックスが招くリスクは、"思いがけない妊娠"だけではありません。起こりうるリスクについて知った上で、避妊意識を見直しましょう。

高いとは言いがたい日本人の避妊意識

厚生労働省の調査報告によると、毎回避妊する割合は未婚男女で半数以下

まずは、現代の日本人の避妊意識について詳しく見てみましょう。厚生労働省研究班が平成22年に行った調査報告(「平成22年度望まない妊娠防止対策に関する総合的研究『第5回男女の生活と意識に関する調査』」)によると、未婚男女のうち、避妊を「いつもしている」と答えた人は、男性で42.8%、女性で37.3%。「したりしなかったり」は男性で21.6%、女性で25.0%、「避妊はしない」は男性で7.6%、女性で6.6%という結果が出ています。「したりしなかったり」と「避妊はしない」を合わせると、男性で39.2%、女性で31.6%が、毎回ちゃんとは避妊していないということになります。

同調査では、未婚男女の主な避妊法として「コンドーム」がトップ(男性97.9%、女性89.1%)。次に多いのが、確実な避妊法とは言えない「膣外射精法」で、男性では7.5%、女性では、なんと22.4%もの人が膣外射精を主な避妊法に選んでいます。一方、100%に近い避妊効果があると言われる「ピル」については、男性4.8%、女性5.4%にとどまりました。

ちなみに、欧米など海外の先進国では、コンドームの利用率は低く、女性主導で避妊できるピルやIUD(避妊リング)が一般的と言われています。

不妊や母子感染のリスクも忘れないで!

では、避妊しないセックスや膣外射精といった誤った避妊法によって妊娠してしまった場合、授かり婚ができればいいですが、お互いの意見が合わずに別れてしまう可能性だってあります。その結果、中絶手術をすると、女性の体にも心にも大きな負担をかけることになります。

一方、避妊しないセックスのもう1つの大きなリスクは、性感染症(STD)です。クラミジア感染症は近年、年間2万件以上の感染報告がありますし、梅毒も流行の兆しを見せています。HIV感染症(エイズ)については、先進国では減少傾向にあるにも関わらず、日本では、2008年に感染者数がピークに達した後も、ほぼ横ばいの状況が続いています。

エイズは一度発症すると今のところ完治は困難ですが、ほとんどのSTDは早めに治療すれば治るものです。ただし自覚症状がないことも多いため、発見が遅れて重症化することもあります。発症前の潜伏期間に行ったセックスで、相手にSTDをうつしてしまうという問題もあります。

さらにリスクとして知っておいてほしいのは、女性の場合、不妊の原因になるSTDもあるということ。例えばクラミジア感染症は、進行すると卵管炎や子宮内膜炎などの合併症を引き起こし、それが将来の不妊につながる可能性があるのです。感染に気づかないまま妊娠すると、赤ちゃんに感染してしまうこともあります。

低用量ピル+コンドームのW使いでリスクを最小限に

もし自分もしくは相手がSTDに感染している可能性がある場合は、検査を受ける必要があります。そして、感染していないことがはっきりするまでは、必ずコンドームをつけてセックスをするようにしましょう。ただしコンドームは、セックスの途中で破れたり外れたりすることもあり、避妊法として確実とは言えません。STD予防と避妊の両方をクリアするには、コンドームと低用量ピルの併用がおすすめです(低用量ピルは、体調や既往歴によっては使えない場合もあります)。

避妊もSTDも、自分だけが気をつければOKというものではありません。本当に安全なセックスをしているかどうか、相手をリスクにさらしていないかどうか、2人で考えてみることが大切です。

※画像は本文と関係ありません

記事監修: 善方裕美 医師

日本産婦人科学会専門医、日本女性医学会専門医
1993年高知医科大学を卒業。神奈川県横浜市港北区小机にて「よしかた産婦人科・副院長」を務める。また、横浜市立大学産婦人科にて、女性健康外来、成人病予防外来も担当。自身も3人の子どもを持つ現役のワーキング・ママでもある。

主な著書・監修書籍
『マタニティ&ベビーピラティス―ママになってもエクササイズ!(小学館)』
『だって更年期なんだもーん―なんだ、そうだったの?この不調(主婦の友社)』
『0~6歳 はじめての女の子の育児(ナツメ社)』など